2016.11.9 Sustainavision News Letter Vol.36:英国現代奴隷法の日本企業への影響英国在住サステナビリティ/CSRコンサルタント・サステイナビジョンの下田屋です。日本もロンドンも大分寒くなってきたようです。ロンドンでは紅葉が少しあり、小さな秋をこちらでも楽しんでいます。このニュースレターは、欧州・英国ロンドンからCSR(企業の社会的責任)/サステナビリティについて、ご連絡をさせていただいております。(お名刺交換をさせて頂きました方等ご縁があった方々にご連絡をさせていただいております。)さて、今回は、「英国現代奴隷法」。この法律が既に施行され日本企業にも影響が及んでいます。今回はその最新動向と日本企業への影響、対応状況についてお伝えさせていただきます。 (Monthly News Letterの定期購読はこちらから) この法律は企業にサプライチェーン上の奴隷制を特定し、根絶するための手順の報告を求めるものになります。対象は、英国で活動する世界での売上高が3600万ポンド(約50億)を超える企業で、会計年度に1回、「奴隷と人身取引に関する声明」を発行することを求めています。そして2016年3月末日に会計年度が終了した企業から、翌4月1日から6か月以内にこの声明を発行することとなっており、この9月末日にその最初の期限が来ています。国際NGOビジネス・人権資料センターのウェブサイトによると11月7日時点で、この声明を発行している企業は938社(うち日本関連企業56社)です。 声明のダウンロードのサイトはこちら:https://business-humanrights.org/en/uk-modern-slavery-act-registryこの法律では、英国政府が対象企業の声明が要求事項を満たしているかについては確認しないとしており、この法律が求めている仕組みは、企業に透明性を促し、市民社会、NGO、大学の研究者などからの監視の目を使用するところです。現時点では、関連団体、NGO・市民社会は、企業に現代奴隷制を確認する取り組みを進めてもらうことを第一に考えており、声明の内容について指摘をすることは考えていません。しかし企業は計画の実行、そして毎年ステップアップすることが求められており、来年度以降内容が不十分な場合には、それら組織からの指摘が始まる可能性はあります。さて、この声明を発行するに当たって要求事項があるが、それは次の表のとおりとなっています。 英国の関連団体の調査では、これらの要求事項の全てを満たしている企業は全体で6%だと言われており、今回弊社サステイナビジョンでは、9月17日現在の日本企業20社が発行している声明を確認しました。 まず下の表のとおり、1の取締役会の承認については25%が記載、ダイレクターの署名があるのが70%。また、2.ウェブサイトへのリンクをホームページ貼っている企業は65%です。 そして3ですが、それぞれを声明の中でカバーしている企業の割合は、①構造35%、②方針35%、③デューディリジェンスのプロセス5%、④リスクの評価と管理20%、⑤パフォーマンス指標5%、⑥研修60%となっています。 これらは単純に記載がカバーされている割合を示すもので、特に3の6項目に関しての記述内容はまだ多くない状況となっています。これは日本企業だけではありませんが、潜在的なリスクの特定がなされていないのにも関わらず実施する項目の記載があるなどちぐはぐな状況もあります。また研修については60%と高いですが、より詳細なターゲット設定、社内、そしてサプライヤーへの実施が記載されている事例は少ないようです。ちなみに公開されている声明では、次の企業が評価が高くなっています。 1.Marks & Spencer: 詳細かつ明確、より良いレイアウトがなされ、国連ビジネスと人権に関する指導原則に則って実施され、協働、マルチステークホルダーのアプローチを強調している https://corporate.marksandspencer.com/documents/plan-a-our-approach/mns-modern-slavery-statement-june2016.pdf2.United Utilities: 潜在的なリスクの地域を特定し、関連する緩和策について説明している http://corporate.unitedutilities.com/united-utilities-modern-slavery-policy.aspx3.Vodafone: 労働者との関わりを考慮し、労働者の声をケーススタディに含んでいる。 http://www.vodafone.com/content/dam/vodafone-images/sustainability/downloads/slaverystatement2016.pdf他、SABミラー等また、2016年10月発表のHistoric Futures とErgon Associatesのアンケート調査 『Has the Modern Slavery Act had an impact on your business』 では、英国、他国に本社のある34社の回答と分析が掲載されています。 https://business-humanrights.org/sites/default/files/documents/msa-report-ergon-oct2016.pdfこの調査の主な結果としては、以下になります。(詳細はレポートをご覧ください。)現代の奴隷問題への理解と意識について、現代奴隷法は、ダイレクターレベルを含めた社内の対話を促進している。計画とエンゲージメントに関連して、現代奴隷法は、現代の奴隷制の方針の作成、リスク評価、モニタリングへ焦点を増やしていくことをリードしている。データ収集と測定について、サプライチェーンとサプライチェーン・リスクに関する情報は、アドホックな方法で現在は収集されている。多くの企業は、現代の奴隷制に関連する緩和と是正措置の行動計画の導入はまだである。この英国現代奴隷法がベースとしているのは、2011年に国連が発行した「ビジネスと人権に関する指導原則」となります。英国は国別行動計画を進める中で、英国内でも発生している現代の奴隷制を撲滅するために、そしてこの指導原則の推進を後押しするものとして英国現代奴隷法を制定しているのです。この指導原則は、英国以外の国においても国別行動計画を持ち関連の法律を制定しながら企業に促している状況があり、世界では着々と取り組みが始まっています。日本の企業は、自社の問題として取り組みを始める時期に来ています。(了)------------------------------------------------------------------------<サステイナビジョンからのお知らせ> <イベント情報> 【Innovation Forum イベント】 弊社とInnovation Forumとの提携によりコード「 SustVision15」をお申込みの際に入力されますと以下のイベントが15%割引となります。・How business can tackle deforestation Implement policy, meet targets, and manage supply chain/procurement risk 開催日:2016年11月21日・22日 場所:ロンドン ※森林破壊に関係する問題、企業・NGOとの協働など議論します。・Sustainable Sugarcane: how companies can deliver Structured debate on the creation of thriving, sustainable producer communities and resilient, assured supply chains ...
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