アライアンス・ブーツ社の従業員エンゲージメント――下田屋毅の欧州CSR最前線(39)

CSRを推進する上で、社内へのCSRの浸透が非常に重要となる。今回、欧州を中心に25カ国で50事業部門、10万人以上のスタッフ、約3千の薬局を展開しているアライアンス・ブーツ社(本社スイス)のCR(企業責任)部長であるリチャード・エリス氏に、従業員のエンゲージメントについての取り組みを聞いた。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)Yahoo Japan and Alterna online carries Sustainavision Managing Director Mr Shimotaya’s article “Alliance Boots Employee engagement” on 3rd of July 2014 (Japanese site).

アライアンス・ブーツは、CSRをトップダウン、ボトムアップで推進ができている欧州のCSR先進企業である。しかし、社内でCSRが推進できる仕組みがもともとあったわけではないようだ。ではリチャード・エリス氏は、CSRを推進するために社内で何を実施していったのか。

エリス氏は、「CSRの推進には、従業員のエンゲージメントが重要となる。従業員の専門知識を活用して、ビジネス全体でコスト効率の良いCSRに関する解決策を提供できることが必要」だと語る。また、「従業員は企業にとって重要な資産であり、すべてのCSRに関する行動や変革は、従業員と一緒に実施する必要がある」と言う。

従業員に対する効果的なコミュニケーション技術を使用すると、より持続可能なビジネスの構築に向けた従業員の知識の蓄積やスキルアップに導くことができる。エリス氏は、それらを実施する方法として以下を上げている。

1)従業員が、サステナビリティのアジェンダを理解し、日々の役割にそのアジェンダを組み込む
2)金銭的報酬、またそれ以外の報酬を使用することによって、CR(企業責任)の仕事に従事する従業員を奨励する
3)すべての企業活動に渡ったCR(企業責任)の知識の移転を確認する。社内のCSRチャンピオン(擁護者/推進者)のネットワークを活用し、さらにそこから得た学びの活用

■従業員エンゲージメントの仕組み
アライアンス・ブーツでは、従業員に対して日々のコミュニケーションを実施、その中で学びも得ることができ、さらにそれを全社的に活用し、ビジネスの拡大にも役立てているという。

エリス氏は、「我々は、従業員とのコミュニケーションには様々な技術を使用している。例えば、店舗を訪問し従業員と話しをすることである。店舗にいる従業員こそが本当の話を伝えてくれる。彼らは問題に対する最良の解決策、あるいは新しいアイデアを提供してくれる」と話す。

さらに、「取締役会と話すことも重要だが、店舗の従業員との会話はより重要で、業務効率を向上させかなりの費用の節約にもつながった」と続ける。
また他にも仕組みがある。顧客、従業員の大多数は女性で 80%を占める。その上で従業員の問題を理解するために、取締役会に女性がいるだけでなく、それぞれのレベルで女性の代表がいるという。

「我々は、多くの女性が家族の世話など他の責任を持っていることを理解している。女性が我々の戦略において鍵となっていることを確認し、彼女らのニーズと必要とするサポートを戦略に組み込むようにしている」(エリス氏)

従業員の課題を理解するためのスタッフ責任者とのミーティングの開催、それを踏まえて従業員の業務に「CSR/サステナビリティを組み込むための訓練」を実施している。そして取締役会が、従業員に対する目標とポリシーを設定し、CSR/サステナビリティに関して従業員の功績に対しての報酬を与える仕組みがある。

エリス氏は、「これら双方がその取り組みについて認識している時、会社と従業員の関係は円滑になる」という。

■社員が「CSRチャンピオン」としてけん引

さらに、社内で「ビジネスとCSR」のために何かをしたい人々、つまりCSRチャンピオン(推進者)を見つけ出し、CSR戦略のターゲットの達成の役割を担わせている。

エリス氏は「我々は店舗の従業員を信頼し、彼らからの信頼も得て良好な関係を構築している。これは我々が求めているもので、これにより適切な方法でCSRを実施してもらうことができている。従業員に仕事上でより自信をもたせること、そしてそれが、従業員にビジネスをより持続可能にするアイデアを思い付くことを可能にさせる」という。

アライアンス・ブーツは、もともとCSRの推進が思うように進められる状態であったということではなく、リチャード・エリス氏やCSRチームが、試行錯誤をして仕組みを作り上げていったのである。

欧州CSR先進企業においても、最初の段階ではCSR/サステナビリティに強い思い入れのあるリーダーの力によって作り上げられてきたようだ。企業の中で、本来のCSR/サステナビリティの重要性について一番知っているのは、CSR担当部門である。是非上記仕組みを参考に社内でその仕組みが機能するよう取り組みを進めていただきたい。

Yahoo Japanへのリンク:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140703-00010002-alterna-bus_all#!bsnLWL
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http://www.alterna.co.jp/13286
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http://www.alterna.co.jp/13286