2014.6.24 Sustainavision Monthly News Letter Vol.19 : トップが自社のCSR戦略を語る

Sustainavision Monthly News Letter Vol.19:トップが自社のCSR戦略を語る

こちらロンドンでは、CSR・サステナビリティ関連のイベントが開催されることが多いのですが、今回が13回目となる「レスポンシブル・ビジネス・サミット」というイベントに参加してまいりましたので、それについてお伝えさせていただきます。
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これは、英国エシカルコーポレーションというCSRマガジンを発行している企業が主催で、5月19日・20日とロンドンで開催され、毎年約400名が参加する大きなイベントとのことです。このイベントの特徴は、特に企業のCEO、副社長、CSO(Chief Sustainability Officer)等がスピーカ―として参加し、自社のCSR/サステナビリティに関する考え方や取り組みについて、パワーポイントなどを使用せずに、インタビュー形式で自らが語るというもので、非常に興味深いものでした。

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下田屋撮影

これらのスピーカーは、各企業から招待された52名で、その内訳は、CEO:12名、副社長:2名、CSO:3名、CSR部長:20名、他:15名です。

今回の主だった大企業からのCEOの出席は、英国スーパーマーケット王手の「セインズベリー」、南アフリカを中心として世界的なビール・飲料会社の「SABミラー」、タイルカーペットの世界的企業である「インターフェイス」などとなります。

各社 CEO 自らが語る、CSR に関する考え方

ジャスティン・キング氏 写真:Ethical Corporation

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英国スーパーマーケット王手のセインズベリーのCEOジャスティン・キング氏は、セインズベリーの「20×20サステナビリティプラン」について、「我々が、20×20サステナビリティプランの目標を作成した理由は、サステナビリティの観点から、我々は非常に多くのことを実施していたが、我々がそれらを念頭に置いてより明確な目的地が必要と感じたからである。」 と述べ、また「我々が2030年の目標を設定するなら、顧客とのコミュニケーションの点では、彼らは我々が真剣ではないと思うだろうし、顧客も今すぐ行動する必要がないと思ってしまう。この点で2020年はちょうど良い時期の目標だ。我々が今何か行動を起こせば、異なる結果をもたらすことができる。」と述べられました。そしてセインズベリーは、既にMSC認証(持続可能な漁業認証)を受けた魚介類や、フェアトレードのバナナ、紅茶、コーヒーなどを世界で一番積極的に活用・販売しているスーパーマーケットだということですが、「近い将来、現在の消費者が望んでいる良品質で、持続可能で、手頃な価格で製品がサプライチェーンから継続して自動的に我々に供給がなされるのは難しくなるので、その部分にはさらにこれから正しい投資が必要となる」と述べていました。

ロブ・ボーガード氏 写真:Ethical Corporation
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また、タイルカーペットの世界的企業であるインターフェイス(欧州・中東・アフリカ)社のCEOのロブ・ボーガード氏が登壇された。ボーガード氏は2011年にインターフェイスに参画。ボーガード氏は「インターフェイスのイノベーションに関する取り組み、2020年の目標をサポートするために、従業員全体での考え方を浸透させるため、クエストと呼ばれる推進プログラムを開発、全従業員を繋げる共通の目標を一緒に持ち日々実行している」と話ます。

インターフェイス社といえば、創業者であり前CEOのレイ・アンダーソン氏がサステナビリティのリーダーとして牽引していたのが有名です。1994年、レイ・アンダーソン氏はポール・ホーケンの著書 『The Ecology of Commerce』を読んだ後、自分が「地球の略奪者」であることに気が付いたとのことで、このまま「取る、作る、捨てる」というビジネスモデルを維持するのであれば、環境、社会に深刻な影響を与える。今後は「地球を無謀に扱い、生態系を衰退させている犯罪者として投獄されることもある」と自らを犯罪者と扱い、この旧来のビジネスモデルから新しいモデルへの移行を実行し、また他の経営者にもその行動の必要性を促しました。


(レイ・アンダーソン氏の2009年のTEDでのスピーチです、アンダーソン氏の考え方が凝縮されています。Ray Anderson: The business logic of sustainability:日本語版はこちら

これを表すコミットメントが、「ミッション・ゼロ」という7つの要素を含むコミットメントで、「2020年までに環境に与える負荷をなくす」というものです。
1.無駄をなくす:無駄を削減、又は可能な場合にはゼロにする。
2.汚染の抑制:自然界に悪影響を及ぼす全ての排出物を無くすことを目指す。
3.再生可能エネルギーの使用:ソーラーパワー、風力発電、埋立ガスなどの代替エネルギーを使用して、化石燃料への依存を減らす。
4.クローズド・ループ・システム:製造と製品プロセスを見直し、ゴミとして排出されたものがリサイクルされるようにする。すなわちバージン原料に頼ることなく製品が循環するクローズド・ループ・システムを作る。
5.効率的な移動システム:無駄や排気を最小限に抑え、効率の良い人・物の移動・輸送をめざす。
6.持続可能性の理解喚起:サステイナビリティの重要性を理解するコミュニティを築く事に貢献する。
7.持続可能なビジネスモデルをつくる:サステイナビリティを基盤としたビジネスモデルによって、経済界全体に影響を与え、全てにおいて好ましい環境を構築する。

これは現在もインターフェイス社が取り組んでいるものです。
残念ながらレイ・アンダーソン氏は、2011年に亡くなられましたが、そのレイ・アンダーソン氏が築いた理念は遺産としてしっかりとインターフェイス社に引き継がれているとのことでした。

このように海外では、CEOが自社のCSR/サステナビリティに対する考え方、また取り組みに関して自らの言葉でライブで語っています。
今回のこのイベントへの日本人での参加は私1人だけでしたが、今後はこのようなイベントで、日本の社長あるいは現地法人の社長など自らが、海外のステークホルダーへ向けて、自社のCSR/サステナビリティの取り組みを語ったり、あるいは、持続可能な社会の構築をするためにCSR/サステナビリティの重要性を訴えるなど、リーダーシップを発揮して発信をしていただければと思っています。

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【イベント情報】
The 5th Annual Responsible Business Awards  

http://events.ethicalcorp.com/awards/

2014年9月29日に「The 5th Annual Responsible Business Awards」がエシカルコーポレーションの主催でロンドンで開催されます。
このイベントは、年1回のCSR・サステナビリティの賞を決めるというものです。
賞のエントリーは、6月25日までとなっています。
当日のアワード・セレモニーについては、日本からの参加の場合、サステイナビジョンのコード「SV10」を入れると10%ディスカウントで参加することができます。
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編集後記

今回お伝えさせていただきましたが、ロンドンではCSR/サステナビリティ関連のカンファレンス、イベントは多く開催されています。今回のようにたくさんのCEOが集まり自らの言葉で、CSRやサステナビリティの戦略について語るイベントというのは、本当に興味深く、そしてこれがCEOのあるべき姿で、まさに企業戦略とCSR戦略がより密接になっているというように感じられました。このようにこちらでは先進事例に触れる貴重な機会を頂いています。そして皆さんにもこのような欧州の生の情報を継続してお伝えしていきたいと思っておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

さて、いよいよ来月ですが、CSRマガジンのオルタナさん主催で、「英国の先進CSR・エシカル企業視察ツアー」が7月7日~11日まで開催され、私は受け入れ側としてお手伝いしています。現在、日本・英国から10名を超えるお申込みをいただいており、ご関心をいただき感謝しています。このツアーの内容については、オルタナ本誌でも特集される予定とのことです。まだギリギリ参加申し込みが可能のようですのでご興味ある方は次のリンクでご確認ください! http://www.alterna.co.jp/12858



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