2018.4.24 Sustainavision News Letter Vol.42: 雇用手数料が作り出す現代の奴隷制

2018.4.24 Sustainavision News Letter Vol.42: 雇用手数料が作り出す現代の奴隷制

サステイナビジョンの下田屋です。ご無沙汰しております。
本日4月24日ですが、バングラデシュのラナプラザビル倒壊から5周年となります。このビル倒壊は、1134人の方々が亡くなった大惨事であり、企業の人権の対応について警鐘を鳴らしました。(この続きは編集後記で。)

このニュースレターは、欧州・英国ロンドンからCSR(企業の社会的責任)/サステナビリティについて、ご連絡をさせていただいております。(このニュースレターは当方が名刺交換をさせて頂だいたりご縁があった方々にご連絡をさせていただいております。)

さて今回は、「雇用手数料が作り出す現代の奴隷制」をお伝えさせていただきます。現代の奴隷制については、最近耳にする言葉かもしれません。これは、発展途上国だけでなく先進国においても、そして日本においても現代の奴隷制、強制労働は存在しているとされています。この中で特に問題視されているのが、労働者や求職者の雇用手数料の負担になります。(Monthly News Letterの定期購読はこちらから)

ILO(国際労働機関)とウォーク・フリー財団の最新(2017年9月)のレポートによると、2016年時点で全世界には推定4030万人が現代の奴隷制の環境で働かされているとされ、また強制労働の被害者は推定2490万人とされている。さらに1600万人が企業活動から搾取されており、そのうちの約半分が「借金による束縛」に関わっています。

ILOの「公正な雇用のための一般原則および運用ガイドライン」においては、「雇用手数料や関連費用は、労働者や求職者に課されるべきではない」としています。しかし、雇用斡旋業者や仲介者が、労働者や求職者に多額の雇用手数料や旅費などの関連費用を課し、そこで労働者が借金を背負う形で働く現状があり、借金によって束縛する状況が作られているのです。これは強制労働に該当し、労働者は債務が返済されるまで、借金を返済する手段として労働を要求されるのです。

全体の92%が雇用手数料の返済を余儀なくされる

国際人権NGO「Verité(米・マサチューセッツ)」は2014年に発表した報告書によると、マレーシアのエレクトロニクス産業に従事する近隣諸国からの移民労働者の92%が、雇用手数料に関して斡旋業者に支払いを余儀なくされており、求職者が債務労働に該当する状況が組み込まれているとしています。またマレーシアの近隣諸国である、バングラデシュ、インド、ミャンマー、ネパール、ベトナムからの移民労働者が、マレーシアのエレクトロニクス工場で働いており、家電、コンピュータ周辺機器などの電子製品を生産する工場は、アップル、サムソン等の有名企業向けにマレーシアで生産されたものの輸出の3分の1を占めているとしています。

同報告書では、マレーシアのエレクトロニクスの工場約200社から計501人の労働者に対してインタビューを実施し以下のような結果となっています。

  •  92%が時間外労働により借金を返済しなければならないと感じている
  •  85%は借金の返済前に退職するのは不可能だと感じている
  •  77%は職を得るためにリクルート費用を支払わなければならず、その為に借金をしていた
  •  94%がパスポートを所持していないと返答
  •  71%がパスポートを取り戻すことが不可能または難しいと返答

これらは強制労働に該当する部分であり、また雇用手数料を支払った際の借金に関連しているのです。マレーシアにおいては外国人労働者への雇用手数料の請求が常態化しており、その手数料が過剰で、移民労働者の負債と強く結びついていることが報告されています。また移民労働者の雇用時に、彼らに誤解を与えるような高待遇の採用条件を伝え、実際にはその条件とは違った労働環境下で強制的に働かされているのです。

またマレーシアで違法とされている企業によるパスポートの保持も行われており、移民労働者の移動の自由を制限しています。移民労働者の多くは、雇用主や第三者が提供する住居で貧しい生活条件で居住し、特に第三者に雇用されている移民労働者は、企業の直接雇用の労働者よりも強制労働下で働かせられる可能性が高いということです。

マレーシアへ出稼ぎにきているネパール出身の移民労働者(大卒)は、仕事を得るためにその家族が就職斡旋会社に雇用手数料として1500ドル(ネパールの年間収入の2倍以上、金利36%)を支払っています。これにより労働者は、1日12時間、週7日労働を余儀なくされている。このネパールの労働者がマレーシアに到着した際に、パスポートを空港で取り上げられ、それ以来パスポートは返却されず、移動の自由を制限されています。

倫理的な雇用方法・モデル

このような状況を改善するために国連機関の国際移住機関(IOM)ベトナムでは、企業の業務やサプライチェーンにおける現代奴隷や人身取引を排除することを支援するプログラム「CREST」を開発した。CRESTは以下の3つを柱として、企業側に移民労働者が奴隷と人身取引関わるような状況に置かれないように企業にプログラムを提供している。

 第1の柱:奴隷制度と人身取引に関する商業部門へ向けたトレーニング
 第2の柱:移民労働者に対する出発前/到着後のオリエンテーション訓練
 第3の柱:サプライチェーン・マッピングと倫理的な雇用の支援

この第3の柱において、特に雇用に関する内容をカバーし、雇用のプロセスとサプライチェーンの上流に焦点を当て自社とそのサプライチェーン上で移民労働者の搾取に関するリスクを軽減する手助けを行う。ここでは従業員の雇用方法や関連する人材紹介会社などを理解するためにサプライチェーン・マッピングを行うとともに、倫理的な雇用方法や慣行に関する指導、倫理的雇用モデルを実施するための段階的なアプローチを支援するとしている。

また移民労働者の雇用方法の変化を促進するために「責任ある雇用のためのリーダーシップ・グループ」が2016年5月に発足、人権ビジネス研究所(IHRB)やコカ・コーラ、ユニリーバなどから構成され、参加企業は「雇用主支払い原則」を遵守するとしている。そして今後10年以内に労働者に課される雇用手数料の完全撲滅を目指し活動を行っている。

労働者が仕事を得るために手数料を斡旋業者等に支払った場合、その後の雇用条件にかかわらず、会社で働く前に既に借金による束縛・債務労働の状況に陥っている可能性がある。これらは多国籍企業やそのサプライヤーに発生している出来事で、日本企業も例外ではない。

日本の外国人技能実習生制度に見る問題

また日本国内で雇用に関わる問題として、外国人技能実習生制度がある。日本では、技術移転や国際貢献の名目で中国や東南アジアからの技能実習生が雇用されている。しかし実際には、製造業や農業、漁業などの労働力不足を補うために技能実習生を活用している現状もある。

外国人技能実習生は、母国での訓練センターで日本語などの研修が必須とされその研修費用を負担している。また来日前に「送り出し機関(現地仲介団体)」に対しビザやパスポート、渡航費などの渡航前費用の負担、さらにその団体や仲介者への「手数料」の支払いがなされることもある。

そして、技能実習生自身の失踪を防ぐ名目で「保証金」を預けなければならない場合もあり、これらの費用の多くは、技能実習生本人が銀行や親族からの借り入れで賄い、その返済のために日本では弱い立場で働かなければならない状況に置かれている場合もある。その仕組み自体が借金による束縛・強制労働を引き起こしているといっても過言ではなく、改善が急務な部分である。

企業は、これらを踏まえ国内外で奴隷と人身取引が発生しているその雇用の仕組みを理解し、企業の側からそれらを排除する取り組み行うことが必要となってきている。(了)


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<サステイナビジョンからのお知らせ>

【4/26(企業向け)サプライチェーンCSR入門】
(一般社団法人ASSC(アスク)セミナー )
The Global Alliance for Sustainable Supply Chain(ASSC;アスク)は、2018年4月26日、ASSC連続セミナー2018(第1回)「サプライチェーンCSR入門」を開催します。

昨今、企業が本業におけるCSR/サスティナビリティ課題への対応を迫られている中、サプライチェーン全体での労働環境や地球環境に対する配慮が、ビジネスを継続していくうえで重要なファクターとなってきました。本セミナーでは、サプライチェーンCSRに関する近年の動向や先進事例、実務的課題とその解決に向けた取り組みなどをご紹介します。第1回にあたる今回は「入門講座」として、サプライチェーンCSRをめぐる国際的潮流や取り組みの重要性といった内容を幅広くお伝えいたします。

とき:2018年4月26日(木)13:30-16:00(13:00開場)
ところ:ベルサールNEXT浜松町 Room1
参加費:7,000円(参加者1名あたり)。正会員企業の方は無料(1法人につき2名まで参加可能)。

※参加申し込みは、「info@g-assc.org」まで。タイトル「4/26セミナー参加」とし、①「ご氏名」②「所属企業名」③「電話番号」④「メールアドレス」のご記入をお願いいたします。

第2回以降は、以下のとおりのテーマでのセミナー開催を予定しております。
・第2回「現代の奴隷制とは?」(5月開催)
・第3回「イニシアティブ参加の勧め」(6月開催)
・第4回「外国人技能実習制度の課題」(7月開催)
・第5回「原材料調達(コットン・カカオ)」(9月開催)
・第6回「サプライチェーン監査の実践」(10月開催)
・第7回「サプライチェーンに関わる各国法令」(11月開催)
・第8回「ビジネスと人権フォーラムでのサプライチェーンに関わる議論」(12月開催)

【第17回サステナビリティ(CSR)プラクティショナー資格講習】


世界のCSR/サステナビリティ分野では非常に大きな動きが起きています。欧米の先進企業は、地球規模で発生している気候変動などの環境課題への対応、またサプライチェーンを取り巻く環境問題、そして人権問題に対応するために、CSR/サステナビリティを中核に据えた企業戦略を打ち出しており、この認識・行動が遅れている企業は今後淘汰されてしまうかもしれません。本講習では、ロンドン在住CSRコンサルタントが講師として、欧米企業が何故CSR/サステナビリティに取り組むのか、またそのトレンドを踏まえて、最新事例とともにCSR/サステナビリティを事業戦略に統合する方法をお伝えいたします。

■日時:2018年3月15日(木)・16日(金) 両日とも9:00~17:00
■場所:東京都港区
■定員:15名
※団体割引、NGO/NPO、大学関係者、公務員、中小企業割引あり
お申込み・お問合せはこちら

【サステナビリティ/CSR報告書の評価】
海外のサステナビリティ/CSRの有識者による御社の英語版のサステナビリティ・CSR報告書についての評価を行います。
サステナビリティ/CSR報告書について、英語で海外のステークホルダーに対して発信する場合には、日本語をそのまま英語に翻訳するだけでは伝わらないことがあります。海外の投資家やステークホルダーに評価されるサステナビリティ/CSR報告書の英語版はどのようなものか、海外の有識者の視点から評価・分析を行い、レポートを提出いたします。
→ 詳細はこちら

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<編集後記>

前回1月のニュースレターから少し時間が空いてしまいましたが、皆さんに置かれましてはいかがお過ごしでいらっしゃいましたでしょうか?

さて、本日4月24日ですが、バングラデシュのラナプラザビル倒壊から5周年となります。企業のサプライチェーン上で発生したファッション業界過去最悪の産業事故でした。ラナ・プラザには、当時5つの縫製工場が入り、従業員は3千人以上が強制労働下で働かされており、このビル倒壊により1134人の方が亡くなり、2500人以上が負傷しました。ここでは、様々な西洋の有名ブランドのために衣服が製造されていました。この強制労働による悲劇は、世界中の企業に人権に関して警鐘を鳴らし、さらなる人権への取り組みを促すきっかけとなりました。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、このラナプラザは元々商業用のビルで、5階建てだったものに違法に3階建て増しを行っていました。そして倒壊当日ビルには亀裂が入っており、倒壊する恐れのあるビルに強制的に労働者は入れられたあと、この大惨事が発生したのです。この悲劇から我々は学ぶことができているのでしょうか? これは、バングラデシュで発生したことであまり実感がわかないとか、聞いたことがあるけれども、そんなに身近に感じていない人もいるかもしれません。

DSC_1710-1昨年2017年8月に私は、バングラデシュのラナプラザの跡地を訪問し、この産業事故で亡くなった方々にお祈りを奉げてきました。跡地は更地で草が生い茂り、その前にはモニュメントが作られていました。

ラナプラザ倒壊から1周年の2014年の4月24日に、ロンドンでは、オックスフォードStにあるGAPの店舗の前や、オックスフォード・サーカスにあるUnited Colors of Benettonの店舗の前で、NGOや市民社会、また労働組合の人々が、「ラナプラザ・ネバーアゲイン」とシュプレヒコールを上げて、このような悲劇を繰り返さないことを訴えていました。実際に自分達の着ている衣服に関係することで、何が起こっていたのかを知り、そのことにより敏感に感じて行動を起こす人たちがいます。

このラナプラザに発注をしていた企業は補償を行うことはもちろん、対策をとらざるを得なくなったわけですが、その後の対応にも差があり、良い対応を行った企業は信頼を回復しました。しかし、現在は何かが発生してから対応するということではなく、サプライチェーンのどこにリスクがあるのかを特定して、そのリスクを回避するべく行動を行う人権デューディリジェンスを行うことが求められています。違う業界であっても、この災害が何を表しているのかを理解し、国際的な視野から行動を行っていかなければならないと思います。サプライチェーンの管理は非常に難しいと考えられているかもしれません。しかしすべては企業が関係しており、関係する企業は責任を持たなければならないのです。そのためにできることは何か、この5周年をきっかけにして、さらに自社に関わる人権・労働問題への対応について進めていただければと思います。

それでは、ニュースレターを最後までお読みいただきありがとうございました。何かご意見やご要望などございましたら、このニュースレターへのご返信をいただければ幸いです。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

(サステイナビジョン下田屋)

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