2014.12.16 Yahoo Japanニュースとオルタナオンラインにサステイナビジョン代表取締役下田屋の記事「いかにグローバルでビジネスと人権を推進するか、「ビジネスと人権フォーラム」最新レポート」が掲載されました

いかにグローバルでビジネスと人権を推進するか、「ビジネスと人権フォーラム」最新レポート――下田屋毅の欧州CSR最前線(42)

国連主催の第3回目となる「ビジネスと人権フォーラム」が2014年12月1~3日にスイス・ジュネーブで開催され、昨年に続き筆者も参加した。このフォーラムは、2011年6月に国連人権理事会において承認された保護、尊重、救済のフレームワークである「国連ビジネスと人権に関する指導原則」の普及を目的として、2012年から年次開催されている。2012年は1000人、2013年は1700人と参加登録者は年々増え、本年は2000人と関心が高まっているのを実感した。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

この「国連ビジネスと人権に関する指導原則」は、全ての国家と全ての企業に適用され、「国家による人権保護の義務」「人権を尊重する企業の責任」「企業活動による人権侵害を受けた者への救済」の「保護、尊重、救済」の3つの柱をフレームワークとして、国家と企業が実施することを明確にし、31の「原則」に整理されたものである。

ビジネスと人権フォーラムは、次を主要目的としている。

1)世界の全地域からのステークホルダーに対し、「ビジネスと人権」に関する対話のための主要な会合場所を提供する。
2)指導原則を世界に拡散し実施の促進、また効果的で包括的なエンゲージメントの強化。
3)指導原則の実施にあたりトレンドと課題、模範事例を見つける手助けをすること。

2014年のフォーラムのテーマは「グローバルにビジネスと人権を推進する:調整・順守・説明責任」。議長は、アフリカ出身のイブラヒム財団議長、モー・イブラヒム博士が務め、ユーモアを交える話ぶりの中に議長としてのリーダーシップを発揮するものだった。

開会式では、企業側の代表としての講演とパネルディスカッションがあり、ユニリーバのポール・ポールマンCEO、ネスレのポール・ブルケCEOらがそれぞれ基調講演を行い、企業が推進するビジネスと人権の指導原則についての先進的取り組みを伝えた。ビジネスを行う上での人権の尊重、人権に対する配慮の継続性、そしてトップがコミットメントし、そのリーダーシップを表すことの重要性を訴えた。

■ 多国籍企業の人権侵害をいかに防ぐか

今回のフォーラムで、特に注目されていたのは、2014年6月にエクアドル・南アフリカから提起された国際的な条約締結による法規制化へ向けた国連の作業部会の設置についての決議26/9についてである。

これは歴史的な背景から、この条約による法規制化が、2011年から導入された「ビジネスと人権に関する指導原則」の進展を弱める可能性があるとされていたからである。

今回は、その条約締結による法規制化を提起したエクアドルのサイドイベントが2回開催され、エクアドル国連代表参事官ルイス・エスピノーサ・サラス氏が、エクアドルが提起にいたった理由を述べるなど関連するディスカッションが活発に行われた。

そして、決議26/9として作業部会が2015年7月から議論が始まるが、それまでの間にこの活動を効果的に進めることができるように、エクアドルは共同で提起した南アフリカなどと活動をしていくという。

エクアドルのルイス・エスピノーサ・サラス氏は、閉会式においてもパネルとして出席しスピーチを行い、「多国籍企業による人権侵害が防ぎ切れていないのは国際的な規制がないからである」とし、多国籍企業による効果的な救済と犠牲者への賠償ができるようにと、条約の制定による法規制化の必要性を訴えた。

同じく閉会式で一番大きな拍手を受けていたのは、アムネスティ・インターナショナルのグローバル問題担当オードリー・ゴーグラン氏のスピーチである。

「3年前の指導原則が出る前から状況は変わっていない」、また「今こそ条約による規制化が必要である。我々には条約が必要なのである」と述べ、人権侵害を食い止め救済を行えるようにする法律の必要性を訴えた。

その後、付言として、前国連事務総長特別代表であるジョン・ラギー教授がスピーチし、指導原則が適用されている場所においては一定の効果を上げていることを強調し、「指導原則は魔法ではないので、導入しようとしなければその効果を発揮することができない」と述べた。

また、「指導原則の導入とさらなる国際的な法制化に本質的な矛盾はない」としたが、現在エクアドルなどから提起されている条約制定については、「多国籍企業だけを取り上げるのは問題であり、国内の企業を含むすべての企業が対象となるべきである」と事例を挙げて伝えた。

さらに、「効果のない条約は数多く存在し、その実効性には疑問がある」とし、「今までどおり指導原則の導入にあたり、一歩一歩着実に進むことが非常に重要だ」と続けた。ラギー教授は、指導原則をこれまで以上に推進をしていくことを促した。

この第3回国連ビジネスと人権フォーラムは、昨年同様日本からの参加は10人程度と少なく残念だったが、地域的にもアジアからの参加が非常に少ない印象があった。また全体として企業からの参加が少ない印象があり、逆にNGOや市民団体、先住民族の存在感が目立っていた。

このフォーラムには、誰でも参加できる。次回のフォーラムは、2015年11月16日~18日だ。企業の方々には、自社の指導原則の取り組みを発表する場として是非足を運び、グローバルな人権の議論に加わり、それを肌で感じ、今後の実践につなげる機会としてほしい。

オルタナオンラインへのリンク:
http://www.alterna.co.jp/14290

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