2015.4.30 Yahoo Japanニュースとオルタナオンラインにサステイナビジョン代表取締役下田屋の記事「トリプル・ボトム・ラインを実践する世界のリーダー ノボノルディスク」が掲載されました

トリプル・ボトム・ラインを実践する世界のリーダー ノボノルディスク――下田屋毅の欧州CSR最前線(44)

ノボノルディスクは、糖尿病ケアを90年以上にわたって研究開発をしてきた、糖尿病分野の世界的リーダーで、デンマーク・コペンハーゲンに本社を置く。製品は5大陸180か国以上で販売され、従業員は世界75カ国に現在4万1900人。血友病と成長ホルモン不全のケアでも著しい貢献をしている。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

同社は、トリプル・ボトム・ライン(Triple Bottom Line: TBL)を企業の経営方針とする、CSRの世界的リーダーである。トリプル・ボトム・ラインとは、社会への責任、環境への責任、財務上の責任にバランスをとり意思決定する考え方で、ノボノルディスクでは、その中心に患者さんを据えている。TBLの方法で経営することが、持続性(サステナビリティ)につながるとも考えている。(図)「グローバル100最も持続可能な企業」に上位で選出され、統合報告書は、英国コーポレート・レジスター社が主催する企業責任報告賞において、この賞が始まった2007年から14年まで統合報告部門で(不参加の2011年を除き)1位を獲得、統合報告における先進企業である。

トリプルボトムラインビジネス原則

ノボノルディスク全グループのCSR/サステナビリティに関する業務を統括する「コーポレート・サステナビリティ・チーム」は15名。年次(統合)報告書、共有価値創造、環境、人権、ステークホルダーへの情報発信、社内教育、ソーシャルメディアについて担当を分けカバーしている。TBLは2004年以来同社の定款に正式に明記されている上、ノボノルディスク・ウェイという企業価値観にもしっかり組み込まれている。

同社の経営トップは、非常に明確な権限をコーポレート·サステナビリティ・チームに委託している。TBLが、ノボノルディスクの世界中の事業のすべての部門で、工場生産者と販売員から取締役会までに渡り、実践されていくことを推進、調整し、挑戦する役を、チームは担っている。特に、挑戦する権限は重要である。そして、従業員エンゲージメントの方法として、社内誌、イントラネット、ビデオ、ポスター、イベントなどの方法を活用している。中でも「TBLクォータリー」と呼ばれるニュースレターを四半期に一度社内外のステークホルダーへ発行、従業員自身の経験を共有するにあたり、ストーリーテリングを使用し説得力のある方法で伝える努力をしている。スザンヌ・ストーマー副社長は、「コミットメントし、言動と行動の一貫性を示すことが、全指導者の最も重要な役割である。」「TBLとサステナビリティが、「追加で行うこと」「できたら良いこと」として見られることが最大の障害となる。我々のビジネスにとって「しなければならないこと」として提示し、ビジネスの一環として取り組む。」と話す。

統合報告書の導入
年次報告において、ノボノルディスクは早くから統合報告書に取り組んできた。1994年に最初の環境報告書を発行、NGOの求めに応じて、環境フットプリントを発表した。1995年には、環境報告書に生命倫理を追加、1998年には、社会的報告書を発行、1999年に環境と社会的報告書を発行、2001年には、TBLをベースにした報告書を発行、そして、2004年に統合報告書へと移行した。統合報告書とは、年次報告書(財務情報)とCSR報告書(非財務情報)が掲載された報告書のことだが、合冊を意味するものではなく、長期的経営戦略に環境・社会的要素の関連づけがなされ、企業活動を行うプロセスの中で環境・社会的価値を生み出すものであり、主に投資家を対象としている。
ストーマー副社長は、統合報告書をこう例える。「私は、我々のビジネスが焦点を当てている糖尿病と統合報告書を時々比較する。それは、慢性で、進行性で不可逆である。一旦あなたが統合報告の作業始めると、あなたが実施する全てが変化することを意味する。そして改善するために常に進歩することが必要となり、引き返すことができない。従って、統合報告に挑戦するための大きな一歩であり、慎重に影響を考慮しなければならない。」
またストーマー副社長は、「統合報告には、統合思考が必要となる。統合報告を始め、その後徐々にビジネスのプロセスにサステナビリティの思考を組み込んでいくこともできる。基準が存在していないか長期間に渡り標準規格が存在していない実験を行っていく必要がある。あなたは、経営トップのサポートとプロセスを駆動するためのチームが不可欠。」と話す。

ノボノルディスクは、2010年に設立された国際統合報告評議会の2011年から開始されたパイロットプロジェクト(世界から約100社が参加)の一員として世界で最も先進的な統合報告書を発行し内外認める中心的な役割を果たし牽引してきた。このパイロットプロジェクトで他社との連携を行う利点として最も重要なことは、一緒に学び、痛みを共有することができるということだという。困難を克服し、よりスマートな方法をプロジェクトから学んでいる。様々な分野からの参加があるが課題の多くは同じで、取り組みが困難なことを共有することができるのは非常に貴重だという。

人権への取り組み

ノボノルディスクはTBLの一環として、長年人権にも取り組んでいる。1998年には、国際人権規約に基づいて人権影響評価を実施。以来「雇用の平等」「職場での安全衛生」「サプライチェーン」「医療へのアクセス」の4つの分野をに焦点を置いてきた。現在は、2011年に発行された国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、改めて活動を仕切り直している。2011年にギャップ分析を実施、指導原則に合致していくよう、行動計画を作成し、人権方針を改正した。また2014年には、世界中の従業員の人権を保障するための「グローバル労働ガイドライン」を人事部が中心となって作成した。2014年初めからは、包括的な人権影響評価・人権デューディリジェンスを実施している。本社から始め、2014年は縦割りで13部署をカバーした。2016年は世界各国支部で実施する予定だ。「人権影響評価をTBL評価の一環として実施することを考えている。国ごとに異なる人権リスクに効率的に対処できるように、また支部もビジネス価値を持って利用できやすい形で実施できるかが課題になる。」と、コーポレート・サステナビリティ・チームの人権担当のブレッシング佳純氏は話す。
責任ある調達では、リスクをもとに優先順位の高い(リスクが高く、購入額が高く、依存している)サプライヤーを選出し、監査の他研修も行っている。この監査には、環境、人権等の観点も含まれる。現在は、それをビジネスと人権に関する指導原則に合致するように改善している最中である。ブレッシング氏は、指導原則の調達部門への導入を行い、調達部門が主導で展開していくという。このようにノボノルディスクには、コーポレート・サステナビリティ・チームが音頭をとり、それぞれの部門に落とし込んでいく歴史があるという。

企業倫理の順守
また、ノボノルディスクは社会的責任の一環として、企業倫理の順守を世界中で徹底している。支社を含む各組織の経営トップが常に重要性を強調し、全世界の全従業員は、毎年企業倫理の研修を受けることが義務づけられている。2014年は、この研修を必須とする従業員の98パーセントが企業倫理の試験を受けて完了した。

再生エネルギーへの転換
ノボノルディスクは、ビジネスの成長に伴い生産数量が増加するにあたり、少ない資源でより多く生産することが重要だと考え、2006年、WWF(世界自然保護基金)との協定において、2014年までに2004年のレベルからCO2排出量を10%削減するという目標を掲げた。世界の生産拠点におけるエネルギー消費構造を見直し、各所改善活動や再生可能エネルギーへの転換を通じて、廃棄物やCO2排出量を削減している。2009年にこの目標を前倒しで達成し、現在も維持している。

事業の成長と環境負荷の関係を遮断する
(図/グラフ)日本国内にある郡山工場(所在地:福島県郡山市)においても、継続的改善による削減活動に加え2014年には、電力消費によるCO2総排出量を再生可能エネルギー(バイオマス発電、風力発電)への転換により2005年比25%まで削減している。

このようにノボノルディスクは、統合報告書の先駆者として、そしてTBLを実践する良い事例である。是非参考に取り組みを始めて欲しい。

Yahoo Japanへのリンク:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150503-00010001-alterna-bus_all
オルタナオンラインへのリンク:
http://www.alterna.co.jp/15020

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