2014.5.14 Yahoo Japanニュースとオルタナオンラインにサステイナビジョン代表取締役下田屋の記事「ラナプラザ・ビル倒壊事故から1周年」が掲載されました

ラナプラザ・ビル倒壊事故から1周年――下田屋毅の欧州CSR最前線(38)

2014年4月24日、バングラデシュ、ラナプラザ・ビル倒壊事故から1年が経過した。このラナプラザ・ビル倒壊事故では、1,130人を超える労働者が犠牲となり、2,500人以上が負傷するというバングラデシュ最悪の産業事故となった。
このビル倒壊事故後、欧米のアパレル企業は、企業の社会的な責任を果たす為に行動を起こしているが、これは大きく2つの陣営に分かれている。
1つは、「バングラデシュにおける火災予防及び建設物の安全に関する協定(通称:アコード)」で、スイスを拠点とする2つの労働組合である「インダストリオール国際労働組合」、「UNI国際労働組合」のイニシアチブによって2013年5月に開始され、ILOが中立的な議長を務めている。アコードの署名企業は、プライマーク、H&M、マークス&スペンサーなどの欧州企業の他、北米企業16社を含む159社におよぶ。日本からは、ファーストリテイリング(ユニクロ)が2013年8月に署名している。

そして、もう1つは、2013年7月に結成された「バングラデシュ労働者の安全のための同盟(アライアンス)」で、北米のウォールマート、GAP、シアーズ等26社が参加しているものである。

2つの組織の双方とも5年を期限とし、「アコード」は法的拘束力のある協定される一方、「アライアンス」の方は、自発的であり拘束力が弱いとの指摘がある。「アコード」の工場検査は厳格とされ、提携工場1,600のうち現在までに250の検査を実施、そのうち8つの工場を一時閉鎖としている。一方「アライアンス」は、工場検査がゆるいとの指摘もあるが、提携工場700のうち現在まで400近い工場検査を実施している。しかしバングラデシュ国内には5,000から6,000にも上る衣料品工場があり、その全てがこの両者の提携工場の検査でカバーされるというわけではない。検査がなされないその他の工場は引き続き環境整備が未対策のままとなることが懸念材料であり、全体の解決へ向けてはさらに時間を要すると思われる。

また、2014年1月にラナプラザの犠牲者に対する基金として、「ラナプラザ信託基金」がILOを被信託人として設立され、全ての企業・組織・個人からの寄付を受け付けている。現在1,500万米ドル(15億円)近い寄付が集まっているが、最終的に必要な補償金額は4,000万米ドル(40億円)には及ばず寄付がさらに必要だとしている。
ビル倒壊時にラナプラザの企業に業務を委託していた英アパレル企業「プライマーク」は、ビル倒壊後ローカルサポートチームを設置、「財務的なサポート」として、被害者と遺族に対する長期補償900万米ドル(9億円)を支出し、さらに追加で100万米ドル(1億円)を「ラナプラザ信託基金」に寄付している。「アコード」への署名、事故発生後の「緊急援助」を実施するなど、「プライマーク」は事故発生後の対応に一定の評価がなされている。

1 周年を迎えたロンドンでのキャンペーン
このラナプラザ・ビル倒壊事故の1周年にあたり、欧州各地で関連イベントが開催された。英国では、BBCが朝からこのトピックについて頻繁にとりあげ、またロンドン各所でキャンペーンやイベントが開催された。筆者は「レイバー・ビハインド・ラベル」という団体が主催する「ラナプラザ・アニバーサリー・アクション」というキャンペーンに参加した。これはロンドンの中心街オックスフォードストリート沿いの米系アパレル企業GAPの店舗の前で開催された。参加者は約50人、そしてメディアやその他見物人が取り巻き注目を集めていた。このキャンペーンには、バングラデシュ国立衣料品労働者連盟会長のアミルイ・ハク・アミン氏が参加、GAPの店舗前で、「ラナプラザの被害者やその家族に対する補償が進んでいない。すぐに補償金が支払われるべきだ。」と訴え、またGAPは、当時ラナプラザから調達をしていたにも関わらず、世界的な動きである「アコード」への参加を拒否したとして糾弾された。またアミン氏は、「アライアンスは、自発的なもので、法的強制力はなく活動としては弱い、また現在より多くの補償金を支払うべきだ」と非難した。また、このキャンペーンでは、GAPの店舗の前に人の鎖を作り、「ラナプラザ・ネバーアゲイン(ラナプラザを絶対発生させない)」と参加者全員でのシュプレヒコールを実施し訴えた。

また、この後、このキャンペーンは、同じくロンドン中心街のオックスフォード・サーカスにある伊系アパレル企業である「ベネトン」の店舗前に移動、店舗の入口を閉鎖するなどして訴えた。ベネトンはこのためにこの日は営業を完全にストップ。ベネトンは、2013年5月に「アコード」に署名している。ベネトンは、ビル倒壊時にラナプラザから調達していた企業の一つとされているが、「アコード」の求める、被害者とその家族への補償金の支払いをしておらず、メディアやNGOから非難を浴びている。この日は、店舗を閉鎖され、店舗前にて補償金の支払いについて訴えられた。

ファッション・レボリューション・デイ
また1周年にあたり、もう一つの大きな動きとして、「ファッション・レボリューション・デイ」が開催された。これは世界にネットワークを持つ組織で、英国を中心に世界へ広げた運動で、4 月24日に自分の服を裏返しに着て、写真に撮り、どこの企業の製品か、誰が作っているのかを確認し、それをツイートするというものだ。筆者は、夕方にロンドンで開催された「ファッション・レボリューション・デイ」のイベントにも参加したが、この組織の今後の動きとしては、「綿花生産や縫製など衣服製造に関わること」・「ファッションに関するやり方」をエシカルでサステナブルなものとして根本から変革を起こしていくというもののようだ。

消費者の観点からは、ただ安いから良いのではなく、それを「誰がどこで作っているのか」までを考えて購入するという倫理的な価値観から判断・行動することが消費者に求められてきている。そして企業人としては、自社のサプライチェーンの中で、製品や部品を「誰がどこでどのようにして作っているのか」について責任があるということを、このバングラデシュのラナプラザ・ビル倒壊から1年が経過した節目に考えていただければと思う。

Yahoo Japanへのリンク:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140514-00010000-alterna-soci
オルタナオンラインへのリンク:
http://www.alterna.co.jp/12952

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