2014.1.23 Yahoo Japanニュースとオルタナオンラインにサステイナビジョン代表取締役下田屋の記事「年々高まる「ビジネスと人権」への関心」が掲載されました

年々高まる「ビジネスと人権」への関心――下田屋毅の欧州CSR最前線(35)

国連主催の第2回目となる「ビジネスと人権フォーラム」が2013年12月2日~4日にスイス・ジュネーブにおいて開催され、筆者は参加の機会を得た。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

このフォーラムは、2011年3月に国連人権理事会から公表された保護、尊重、救済のフレームワークである「国連ビジネスと人権に関する指導原則」の普及を目的として、2012年から年次開催されることとなったものである。

2012年の第1回目の議長は、国連ビジネスと人権に関する指導原則をとりまとめた主要人物である、ジョン・ラギー教授が務めたが、第2回目の今回は、アセアン・ファンデーションの常任理事であるマカリム・ウィビソノ博士(元国連人権委員会議長、元インドネシア大使)が務めた。

このビジネスと人権フォーラムは、次を主要目的としている。

1)世界の全地域からのステークホルダーに対し、「ビジネスと人権」に関する対話のための主要な会合場所を提供する。

2)指導原則を世界に拡散し実施の促進、また効果的で包括的なエンゲージメントの強化。

3)指導原則の実施にあたりトレンドと課題、模範事例を見つける手助けをすること。

ビジネスと人権フォーラムは、2012年の1000人を大幅に上回り、参加登録が1700人を超え、より関心が高くなっている。参加者は、市民社会・先住民族組織が3分の1を占め一段と関心が高いが、企業関係者は17%にとどまった。

日本からの参加者は、政府関係者はいたようだが正式な代表を送ってはいなかったようだ。また一般企業からの参加は日立製作所のみで、NGO・大学研究者を含め日本関係者は10人前後と少なかった。

■ 目立った市民社会の訴え

2013年のビジネスと人権フォーラムの本会議(12月3・4日)はセッションの方法が改善され、基本的に同じフォーマットで、モデレーターの監督の下、会場の参加者全てに発言権があり、その時間が確保されるようになった。

これはマルチステークホルダーダイアログの質を高めるために、参加者すべてが対等な立場で参加し発言できるようにしたものである。

パネリスト、コメンテーター、および会場からの発言者は、時間制限が課され、パワーポイントやその他の視覚的なプレゼンテーションは許可されていない。

会場の異なるステークホルダー・グループの参加者すべてに発言権があり、1)各国政府、2)企業、3)市民社会組織、の3つのカテゴリに大きく分けられた。

各テーマ別セッションでは、パネリストの報告の後に、これらの3つのステークホルダー・グループが順番に発言の機会が与えられた。特に市民社会組織の発言が活発であった。

印象的だったのは、先住民族が、多国籍企業による天然資源開発に関わる土地の収奪・環境汚染による人権侵害について伝え、国連のワーキング・グループに状況確認のためのサイトビジットを訴えるという場面が多く見られたことだ。

市民社会組織は、プレ・デーとなる12月2日に「市民社会ダイアログ」というサイドイベントを開催、本会議において効果的にそして効率良く自分達の訴えが届くように準備をしている。

これは、2012年の第1回のフォーラム全体として、方向性がなく効果的なものではなかったこと、さらに国連のワーキング・グループが、国連システム内で決定力と影響力に欠け、国家レベルで発生している人権侵害に影響を及ぼすことができないと市民社会組織は感じていたことから、これらを改善するべくフォーラム前より準備してきたという経緯がある。

市民社会組織の大方の意見としては、指導原則でいう国が人権の保護の役割を果たしていないということ、法整備が整っていないことが問題だとし、そのため企業の自主性に任せられているために取り組みが進んでいないと指摘している。

そのため指導原則についての条約・法規制による拘束力を強め、条約・法令違反に対する制裁を行うことにより、企業の人権配慮が進むことを望んでいるようだ。

■ 国家での取り組み

指導原則に則った国家の取り組みだが、世界の各地域の中で、国内行動計画を発表しているのは英国のみで、2013年9月4日、「グッドビジネス:国連ビジネスと人権に関する指導原則の実践」を発表している。

これは、世界で初めて指導原則の実践を国家の行動計画として定めたもので、英国の今後2年間の行動計画が定められている。

計画は、全ての英国政府の省庁に適用され、英国内にある全ての企業に取り組みを促すものだ。フォーラム開催時、指導原則に則り国内行動計画を発行しているのは英国だけであり、今回のフォーラムにおいても、その行動計画の取り組みについて英国政府代表が主張していた。

国家行動計画の取り組みが進んでいる地域はEUで 「欧州委員会CSRについてのEU新戦略に関するコミュニケーション」の2011~14の行動計画の中で、全てのEU加盟国に指導原則の導入についての国内の行動計画に入れ込んでいる。

欧州理事会は2012年、EU内での国家行動計画の策定について推進を後押しするために、全てのEU加盟国に2013年末までに指導原則の実践に関する国家行動計画の開発について要求、欧州委員会はEUレベルでの指導原則の導入に関する計画を立てることを約束した。

英国以外のEU加盟国の中では、オランダ、スペイン、イタリア、フィンランド、デンマークが、国内行動計画の発行に向けて準備をしており、2013年中、あるいは、2014年に発行予定である。

EUはその他、「ビジネスと人権に関する指導原則」の実践に関わる施策として、既に3つの重要な業界、1)石油&ガス、2)情報通信技術(ICT)、3)人材紹介会社の企業向けに「人権ガイド」を発行、また、中小企業にも人権についての配慮を促すために「中小企業のための人権入門ガイド」を発行している。

米国政府はまだ指導原則を導入するための国家行動計画ついて正式に特定のプロセスまたはその計画を開発するための明確な意思を発表していない。

しかし、今回のフォーラムでは、米国政府代表からミャンマーにおいて50万ドルを超える投資等をする米国の個人・企業については人権、労働者の権利、汚職、環境方針とその手順について報告書を提出することが2013年6月より法令により義務付けられていることの報告がなされている。

■ 2014年は行動の年

ビジネスと人権フォーラムの閉会式は、メアリー・ロビンソン氏(前アイルランド大統領、元国連人権高等弁務官、メアリー・ロビンソン財団:気候正義・代表)の辞が印象的だった。

彼女は、2014年を、人権・気候変動への対応の行動と実践の年とすることを、各国政府、企業、市民社会に対して、強く嘆願し、会場から大きく共感を得た。

日本からの参加は前述のとおり数名で存在感がなかったのは非常に残念なことだが、この第2回ビジネスと人権フォーラムは、国レベルでの活動状況、企業の推進事例や、企業に関わる人権侵害の現状把握、そして、それに対する市民社会側の意見を伝える場として機能し、マルチステークホルダーの対話ができる実践的で意義があるものと感じた。

次回2014年のフォーラムでは、自社の指導原則の取り組みを発表する場として、また世界での企業に関わる人権の議論を肌で感じ、自社の実践にさらにつなげる機会として、是非足を運んでいただければと思う。

Yahoo Japanへのリンク:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140123-00010000-alterna-bus_all&p=1
オルタナオンラインへのリンク:
http://www.alterna.co.jp/12221

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