2014.4.23 Yahoo Japanニュースとオルタナオンラインにサステイナビジョン代表取締役下田屋の記事「CSVの元祖、ネスレの包括的CSRプログラムとは」が掲載されました

CSVの元祖、ネスレの包括的CSRプログラムとは――下田屋毅の欧州CSR最前線(37)

共通価値の創造(CSV: Creating Shared Value)と聞いて思い出すのは、その提唱者としても知られるハーバード大学マイケル・E・ポーター教授だろう。しかしCSVという名前を企業として最初に世の中に出したのは、ネスレのようだ。今回スイス・ネスレ本社・公共広報マネージャーのヒラリー・パーソンズ氏にネスレのCSV・CSRについてロンドンで話を伺った。欧州スイスを本社とするネスレがCSVをどのようにとらえ、また、CSRを推進しているのか、彼女との対話を元にお伝えしたい。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

ネスレは、自社のCSR活動の一環としてCSVを2006年から実施しており、マイケル・E・ポーター教授等が提唱するよりも歴史は古い。ネスレはCSVの先進的事例としてポーター教授の論文にも出てくるが、そもそもCSVという名前は、ネスレのCSRを他社と差別化する為に考え出したもので、現ネスレCEOであるポール・ブルケ氏が、CSVをネスレが推進する中で、ポーター教授にこの言葉の使用を促したということだ。
パーソンズ氏は「ネスレのCSVは、人権とコンプライアンス、環境のサステナビリティなどの土台の上にあり、それら全体でネスレのCSR活動として構成されている」と話す。ネスレのCSR活動は、「ネスレの社会ピラミッド」として3段構造となっている。一番下の土台が「人権とコンプライアンス」、二段目が、「環境サステナビリティ」、そして、一番上が「CSV」となっており、「CSV」はこの2つの土台の上にあり支えられている。つまりネスレのCSRは、「CSV」だけでなく、それを支えている「人権とコンプライアンス」、「環境サステナビリティ」についても実施することでCSR全体をカバーしているのである。

さて、CSRの需要な要素をカバーする「ネスレ社会ピラミッド」だが、その一番下の土台である「人権とコンプライアンス」の部分には、「法令遵守の監視」、「責任ある広報とマーケティング」、「製品の安全と品質」、「腐敗防止」、「ネスレと人権」、「人権におけるステークホルダーエンゲージメント」、「リスク影響評価」、「安全衛生」が含まれる。この中のどれもCSRの要素としては非常に重要でまさしく土台となるものだが、先進的に取り組んでいる項目としては、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権に関わる部分についてである。
ネスレは、2010年にデンマーク人権研究所とパートナーシップを締結し、人権影響評価を実施。そして2013年には、そのネスレの人権デューデリジェンス・プログラムの取り組みをステークホルダーに伝えるものとして、「ホワイトペーパー」を発行している。
ネスレ・人権デューデリジェンス・プログラムは、下記の8つの柱の上に構築されている。

①     人権を、新しいまたは既存の方針へ統合
②     幅広い人権問題においてのステークホルダーエンゲージメント
③     従業員に対する人権トレーニングと人権に関する能力開発
④     企業活動に関するリスク評価
⑤     リスクの高い操業場所における人権影響評価
⑥     ネスレの人権ワーキンググループを通した人権活動のコーディネート
⑦     人権活動を実施する為の先進組織とのパートナーシップ
⑧     そのパフォーマンスに関するモニタリングと報告

ネスレは、このように国連「ビジネスと人権に関する指導原則」をネスレ・人権デューデリジェンス・プログラムにより実施している。また人権問題は、「児童労働」、「責任ある調達」、「サプライヤーの人権」として、ネスレのマテリアリティ分析の中で、ネスレとそのステークホルダーにとっての最優先事項として取り上げている。
同じくネスレのCSVを支える「環境のサステナビリティ」は、「環境製品ライフサイクル」、「農業原材料」、「工場の環境の高効率化」、「パッケージの改善」、「輸送と配送」、「持続可能な消費」、「生物多様性」を項目として取り上げ、ネスレのバリューチェーン全体に適用されている。ここでは、廃棄物ゼロへの取り組みや輸送の改善による二酸化炭素排出量とエネルギー消費量の削減、また、生物多様性、森林の転用および破壊的な収穫、水資源管理に関する保護対策を「責任ある調達ガイドライン」に盛り込むなどをして実施している。
そしてネスレ社会ピラミッドの一番上にくる「CSV」だが、ネスレが力を入れているCSVの3分野は、「栄養摂取」、「水資源」、そして「農業・地域開発」で、これらは、ネスレの本業に近いテーマであり、そしてグローバルで大きな課題の解決にも貢献するものだ。またパーソンズ氏は「ネスレのCSVには、フェアトレードが含まれるので、ポーター教授の定義するCSVとはこの点では違う」と話す。

そして、ネスレは、これら「ネスレ社会ピラミッド」に関する事項を「事業運営に関する10の原則」にちりばめて、この原則に則って企業活動を行っている。

<消費者>
1.栄養・健康・ウエルネス
2.品質保証と製品の安全性
3.消費者とのコミュニケーション
4.ネスレの事業活動における人権

<ネスレの人材>
5.リーダーシップと責任ある行動
6.職場の安全衛生

<サプライヤーと顧客>
7.サプライヤーおよび顧客との関係
8.農業と地域開発

<環境への取り組み>
9.持続可能な環境への取り組み
10.水資源

また、この10原則の中の「ネスレの人材」という項目においては、従業員に対する安全衛生の確保やエンゲージメントについても実施している。

このように、ネスレはCSVの実践とともにCSRの重要な要素についても進め、包括的にCSRを実施している。CSVの実践を進める上で参考になる事例と思われるので、是非参考にして頂きたい。

Yahoo Japanへのリンク:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140423-00010001-alterna-bus_all
オルタナオンラインへのリンク:
http://www.alterna.co.jp/12883

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