2013.5.31 Yahoo Japanニュースとオルタナオンラインにサステイナビジョン代表取締役下田屋の記事「日本も存在感、CSR報告書の新ガイドライン「G4」」が掲載されました。

日本も存在感、CSR報告書の新ガイドライン「G4」 ――下田屋毅の欧州CSR最前線(29)

CSR/サステナビリティ報告書の国際ガイドラインを定めるGRIによる「GRI国際会議2013」が2013年5月22日から24日までアムステルダムで開催され、第4版である「G4」が発表された。この会議には世界88カ国から約1600人が参加、今までで最大規模のGRIの国際会議となった。これに先立ち日本では委員会も組織され、国際会議では日本側も存在感を示した。

GRIは「グローバル・レポーティング・イニシアティブ」の略称で、2000年に最初のサステナビリティ報告書のガイドラインを発行、今回が4回目の大きな改訂となる。

G4が発表されるにあたり、日本ではG4マルチステークホルダー委員会を組織、委員長として冨田 秀実氏(元ソニーCSR統括部長)を迎え、アドバイザーとして、サステナビリティ日本フォーラム後藤敏彦氏、委員として損保ジャパンCSR部上席顧問の関正雄氏らが名を連ね、日本財団が事務局としてサポートしている。

この委員会を組織した目的として、「持続可能な社会に向けて、企業の非財務情報開示に関する議論を深め、国内での普及啓発国際的基準へのエンゲージメントを図ること」としている。

委員会は、今回のGRI国際会議2013へ向けて日本代表団を結成、筆者も代表団の一員として参加した。日本代表団を結成した背景として、今までのGRI国際会議では、日本からの参加が非常に少なく、日本としての存在感を示すことができずにいた。

そこで、今回国際的に注目を集めるG4が発表されるGRI国際会議2013に向けて結成し、多くの参加を促し、日本としての存在感を示すとともに、日本独自の公開セッションを設けて日本のCSR活動について国際会議にて伝えたいという関係者の思いがあった。

今回の日本代表団は24名で構成され、最終日の24日には、日本独自の公開セッションを開催、日本企業のCSR/サステナビリティの取り組み、特に東日本大震災後のCSRに関わる復興支援について報告がなされた。

さて、今回発表となったG4とはどのようなものなのか少し触れてみたい。G4の大きな目的は、次の通りだ。
1)初心者、経験のあるレポート作成者にとってもユーザーフレンドリーにする
2)定義を明瞭にし、技術的な品質を改善する。
3)他の報告書のフレームワークと連携する
4)国際統合報告書委員会(IIRC)と連携し、サステナビリティ報告書と統合報告書を関連付ける方法のガイダンスを提供する
5)財務情報開示の国際的プロトコルであるXBRLの改良サポートをする

また、今回G4に関して押さえておくべき重要なポイントとしては以下が挙げられる。
1)重要性(マテリアリティ)をより明確化すること
G4では、企業に、何が重要か、どこの地域で重要かを報告することが求められる。重要性(マテリアリティ)はG3でも取り上げられており、新しいものではないが、G4のフレームワークでは、より明確に影響、リスク、機会といった重要性(マテリアリティ)を中心に報告することが必要となる。
2)アプリケーションレベルチェックの除外
サステナビリティ報告書のレベルをチェックするアプリケーションレベルチェック(ABC)とその外部保証を知らせる「+プラス」がフレームワークから除外された。 G4では、GRIのガイドライン に“準拠”した、「中核」と「包括」報告書の2つの選択肢がある。「中核」と「包括」報告書の間の最も大きな違いは、ガバナンスと戦略の開示数である。
3)GRIのガイダンスを2つのパートに集約
G4は、ガイダンスを2つのパート(報告原則と標準開示、実行マニュアル)に集約。パート1は、報告の原則に焦点を当てて、内容、計画、ガイドラインを使用した組織の概要の情報を提供するように設計されている。パート2は、重要なトピックについてのガイダンスを含む実行マニュアル。パート2が何を報告するのかを伝えながら、パート1は、どのように報告するかを説明している。
4)マネジメント・アプローチの開示(DMA)の詳細を提供
DMAには2つのタイプ、「包括的DMA」と「特定側面のDMA」が存在する。「包括的DMA」は、企業に組織の重要項目のための3つの基本的な項目の開示を求め、「特定の側面のDMA」は、DMAに何を含めることを考慮すべきかについて、より詳細なガイダンスを提供している。

5)ガバナンス、報酬などの開示
「包括」報告書に要求されているガバナンス開示は広く、深い。 G4では、環境、社会、経済的影響の監視、報酬、研修、取締役会の多様性、ミッション、ビジョン、価値の開発における役割、に関しての手順の記述を求めている。また、新しいカテゴリーとして「倫理と誠実さ」を一般標準開示に、「サプライチェーン」、「腐敗防止」「温室効果ガス排出量(スコープ123)」を特定標準開示に追加した。

また、G4では、報告書の内容を確定するための4つのステップを以下のとおり設定して伝えている。
1)識別:バウンダリー(報告範囲)と重要性の特定
2)優先順位:報告書の内容の優先順位付け
3)検証:重要性とステークホルダーへの説明に関しての検証
4)レビュー:報告書発行後、次回報告書作成へ向けての内容の再検討

G4の発表の約1か月前となる2013年4月16日、欧州委員会は、非財務情報に関する報告の義務化に関する提案書を欧州議会に提出した。

これは、欧州で活動をしている従業員500人以上の大企業が、それぞれの年次報告書に社会、労働、人権の尊重、反汚職と賄賂の問題、および取締役会の多様性に関する情報開示義務が発生すること意味する。

現状では、欧州の経済界やドイツで成立に反対する動きがあるようだが、もしこの法案がこのまま成立すると、上場企業は2017年から、非上場企業に対しても2018年から開示義務が適用されることとなる。

非財務情報の開示は、欧州では、デンマーク、フランス、スウェーデン(国営企業のみ)が国内法において既に法制化されている。このGRIの国際会議においても、非財務情報の開示に関する欧州指令の動向についての全体セッションが開催されており、関心の高さが伺えた。

G4は、自社のCSRを戦略的に推進する中で、サステナビリティ報告書をどのように位置づけるのか、実行が伴う形でのCSRの報告ができるように意図して作られているようだ。サステナビリティ報告書は、あくまでもステークホルダーへ自社のCSR活動を伝える一つの媒体でしかない。

ステークホルダーとのコミュニケーション、エンゲージメントをより活発に実施していくツールの一つとしてG4の研究を始めてみて欲しい。
(在ロンドンCSRコンサルタント下田屋毅)

<日本語訳発行について>G4の日本語訳の発行については、現時点では2014年1月を予定している。G4(英語版)は次のリンクからダウンロードが可能だ。
https://www.globalreporting.org/reporting/g4/Pages/default.aspx

Yahoo Japanへのリンク:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130529-00000304-alterna-bus_all
オルタナオンラインへのリンク:
http://www.alterna.co.jp/11096

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