「欧州企業の人権に対する取り組み、その1(人権に関するギャップ分析)」
欧州でも「国連ビジネスと人権に関する指導原則」についての関心が高く、発行から2年弱が経過する中で、欧州の先進企業を中心としてその取り組みが実施されている。ここで今回は、欧州での企業の「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権に関する取り組み度合いや、それぞれの企業のその取り組み事例を確認していきたい。Yahoo Japan and Alterna online carries Sustainavision Managing Director Mr Shimotaya’s article”European Companies and Human Rights (1) Gap Analysis” on 10th of April 2013 (Japanese site).
こちらロンドンで、セミナーやワークショップの機会を活用し、CSRヨーロッパのスタッフ、人権の専門コンサルタント、その他CSR関係者や企業の方々に話を伺うと、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則った欧州企業の人権のフレームワークづくりは、欧州企業においても、まだスタート地点にいる」ということである。
「国連ビジネスと人権に関する指導原則」は、(1)国家による人権保護の義務、(2)人権を尊重する企業の責任、(3)人権侵害を受けた者への救済へのアクセス、から構成され、「人権の尊重」、「救済へのアクセス」に関して企業の取り組みが必要とされている。
「人権を尊重する企業の責任」をまとめると以下の4つ
① 人権方針:人権を尊重する責任を果たすというコミットメント
② 人権デュー・ディリジェンス:人権への影響を特定、防止、軽減する。また、どのように対処するか責任をもつプロセス
③ 是正:企業の人権への負の影響を是正するプロセス
④ 状況の問題:どの地域の事業活動においても、法令を遵守し、国際原則で認められた人権を尊重する。国内法と国際原則が相反する場合は、国際原則の尊重を追及する。
「救済へのアクセス」は、以下の1つ
① 苦情処理メカニズム:企業は苦情処理メカニズムと呼ばれる救済制度を設け、その実効性を確保する。
世界最大の鉄鋼メーカーであるアルセロールミッタル社(本社:ルクセンブルク)は、上記の「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則って人権プログラムを作成、①方針開発、②コミュニケーション、③トレーニング・認識、④プロセスと手順、⑤追跡、の順番でサイクルを廻し始めた。アルセロールミッタル社は、CSRヨーロッパのエンタープライズ2020プロジェクトのサプライチェーンと人権の共同リーダー務め、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則って人権プログラムを作成している最先進企業といえる。しかしながら実際には、アルセロールミッタル社ほど指導原則の枠組みに沿ってプログラムの作成・推進ができている企業は他にあまり見受けられない。
しかしながら、欧州の先進企業は、人権に関しての取り組みは今までも実施してきており、人権に関するプログラムを既に持っている。そして「人権プログラム」と「国連ビジネスと人権に関する指導原則」とのギャップ分析を実施することから始めているようだ。
2011年、海運企業のマースク社(本社:デンマーク)は、外部専門家とともに、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」が期待するフレームワークと自社の今までの人権の取り組みとの間のギャップ分析を実施した。ギャップ分析実施後、M&Aに関連する人権スクリーニングのデュー・ディリジェンスを含んだ形で、指導原則と一致するようにいくつかの取り組みを実施。人権のフレームワークは、ギャップ分析を基に開発され、マースク・グループの「人権の為の行動計画2012-2013」を発行している。
マースクの行動計画では以下のことを実施するとしている。
- 人権リスクを防止するための措置のマッピングと統合
- 非常にリスクが高い地域・国における指導原則の適用の調査
- 運用レベルの苦情処理メカニズムの設定
- 法的、契約プロセスの確認
グループ全体での人権に関する影響を知り、そして公表を実施していく。また、ギャップを見つけた時点で、それを埋めていくことを目標としている。
ザ・コカコーラ・カンパニー(本社:アメリカ)では、2011年初頭、デンマーク人権研究所に同社のグローバル方針のギャップ分析を依頼。その後「人権声明」と「職場の権利に関する方針」を更新した。そしてそのギャップを埋める為に、差別的発言、先住民やその他の問題について新しいガイダンスを追加し、オンラインの管理者ガイドを更新した。
このように現在の欧州先進企業の人権に関する取り組みは、今までそれぞれ培ってきた「人権プログラム」と「国連ビジネスと人権に関する指導原則」とのギャップを認識して、現状までの取り組みと何が違うのか、今後何をする必要があるのかのギャップ分析を実施、次の活動へと結びつけている。
(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)
Yahoo Japanへのリンク:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130410-00000307-alterna-int
オルタナオンラインへのリンク:
http://www.alterna.co.jp/10848
Yahoo Japan:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130410-00000307-alterna-int
Alterna online:
http://www.alterna.co.jp/10848