環境の大量破壊「エコサイド」が国際法で裁かれる日――下田屋毅の欧州CSR最前線(24)
「エコサイド」という言葉を聞いたことがあるだろうか?「エコ」と「ジェノサイド」(大量虐殺)を組み合わせた新語だ。大量虐殺や戦争犯罪と並んで、国連が定める「平和に対する罪」の「第5の犯罪」として定めようという動きが英国を中心に欧州で広がっている。Yahoo Japan and Alterna online carries Sustainavision Managing Director Mr Shimotaya’s article”The day of the mass Environmental destruction, Ecocide, judged by international Law” on 22nd of March 2013 (Japanese site).
「エコサイド」は、2010年、環境権保護を訴える国際弁護士であり法廷弁護士であるポリー・ヒギンズ氏が、国連の定める平和に対する罪の5つ目として「エコサイド」を国際法として認定すべきだと公式に提案した。
これが実現すれば、「エコサイド」は、(1)ジェノサイド(大量虐殺) (2)人道に対する罪 (3)戦争犯罪 (4)侵略犯罪に並んで、国際刑事裁判所で処罰される対象となる。
■企業トップや、融資した銀行が裁かれる
「エコサイド」とは、その名のとおり環境に関わる犯罪を表すものである。「ジェノサイド」が、人の大量虐殺行為を表すように、「エコサイド」は、環境の大量破壊行為を表す。
ヒギンズ氏は、「エコサイドとは、ある地域において、人為的、または、その他の要因により、その地域の住民の平穏な生活が甚だしく損なわれるほどに、生態系が広範囲にわたり、破壊、損傷、損失を被ること」と定義する。
「エコサイド」はただ単に環境を破壊することのみを意味するのではなく、環境破壊が地域住民や将来世代の人々に影響を及ぼす「人権」に関わる問題と捉えられている。
「エコサイド」を定めた新法が成立すると、企業が、故意であろうとなかろうと環境の大量破壊行為をした場合に、企業のトップなどがこの罪を犯した責任を国際刑事裁判所で裁かれることとなるというのだ。
エコサイド法で裁かれる刑事責任のある人々は以下となる。
①企業活動においてエコサイドを生じさせた企業のトップ
②エコサイドを生じさせる事業を優先させる政策を許可した国家・州の元首
③エコサイドを生じさせる事業に資金供給を許可した銀行のトップ
■すでに発生している「エコサイド」
生態系の大規模破壊であるエコサイドは、企業が関与した事例として現在も発生している。それらの具体例として次の3つが挙げられる。
①熱帯雨林の森林伐採と同様、大規模な土地利用による生息地の直接破壊を引き起こす (例:アマゾン熱帯雨林の森林伐採)
②原油の投棄や流出などの、故意か事故かに関わらず重大な汚染 (例:BPによるメキシコ湾沖の原油流出事故による大規模自然破壊、シェル社によるナイジェリア・ニジェール・デルタ地帯での約50年に渡る原油流出によって引き起こされた大規模自然環境汚染)
③ タール/オイルサンド、石炭、金鉱山の採掘のような、全体の地形が取り除かれるようなもの (例:カナダ・アサバスカ採掘地帯タールサンドの抽出)
ガーディアン誌によると「国連の調査では、世界のトップ企業3,000社が引き起こしてきた環境被害の総額は米2.2兆ドルにのぼる」という。
タイム誌によると「国連の調査では、世界にある3,000の公営企業から、環境破壊や汚染について補償を求めた場合、それぞれの企業の利益は1/3にまで減少するという試算がある」。
■80カ国が署名すれば「エコサイド法」が成立
国連の定める平和に対する罪の5つ目として「エコサイド」を国際法とすることが公式に提案されている。このエコサイド法を発効するためには、法律は、国際刑事裁判所を支配するローマ規程の改正を必要とし、締約国121か国のうち80か国がこのエコサイド法に同意する署名をすると法改正が成立する。
エコサイド法は既に世界各国からの人々の何千人もの支持を得ており、政治家、環境リーダー、学者、弁護士らも支持、そしていくつかの国は慎重に動向を見守っている。
欧州における「エコサイド」に関する法律は、欧州で市民1万票を得た場合、公式な欧州市民イニシアチブの対象となり、「エコサイド指令」としての草案を欧州議会に提出ができることとなっている。そして最近、欧州議会の議員らが「エコサイド法」の欧州市民イニシアチブを立ち上げている。
■すでにエコサイド法の模擬裁判も
2011年9月、この「エコサイド法模擬裁判」がロンドン最高裁判所で開催された。この模擬裁判では、架空のCEOが、カナダ・アサバスカ採掘地帯でのタールサンド抽出に関するその破壊的な慣行「エコサイド」を引き起こしていることについて裁判にかけられ、有罪とされた。これは、エコサイド法が実際に機能することの実証となるとされる。
かつて、英国政府前首席科学顧問のデビッド・キング卿が、「21世紀は資源戦争の時代となり、人類は水と石油を中心に、残された最後の資源をめぐって争うこととなる」と警告した。
もしエコサイドが罪になれば、乏しい資源をめぐる紛争に終止符を打ち、そして環境に悪影響を及ぼさない持続可能なエネルギー調達方法のみが選択肢として残されることとなるという。
このように「エコサイド」は、今後広く議論され、すぐに国際的な認識を得ることが予想される。「エコサイド法」に関する今後の動向を引き続き見守っていきたい。
(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)
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