世界の「統合報告書」をリードする「ノボノルディスク」社――下田屋毅の欧州CSR最前線(13)
欧州では、企業の「統合報告書」への動きが非常に注目されている。国際統合報告委員会(IIRC)を中心に、統合報告書のパイロットプロジェクトも実施されており、サステナビリティ報告書のガイドラインであるGRIについても、統合報告書の方向へ舵を切った。欧州の企業も今後の統合報告書の動向を見守っている。Alterna online carries Sustainavision Managing Director Mr Shimotaya’s article “ Novo Nordisk leads Integrated Reporting in the World” on 6th of June 2012 (Japanese site).
Alterna online:
http://www.alterna.co.jp/9190
◆何が統合報告書の目的なのか?
統合報告書とは、もちろんアニュアルレポート(財務情報)とCSRレポート(非財務情報)の統合である。日本では「年間に報告書を2冊も作るのは大変だから」と軽く捉える向きもあるが、その「統合」には大きな意味を持つ。
「統合報告書は、サステナビリティ報告書ではない。進化した企業報告書のことである」と国際統合報告委員会技術部長のルイス・ガスリー氏は話す。それは、単に2つの報告書を合体させるのではなく、経営の根幹に企業の社会的責任の観点を組み込むことを意味する。
今回は統合報告書で世界を牽引している、「ノボノルディスク」についての取り組みをお伝えする。
ノボノルディスクは、デンマーク・コペンハーゲンをベースとした医薬品企業で、1923年に設立された。製品は5大陸190か国で販売され、従業員は3万3000人、バイオテクノロジーを基本としたヘルスケア企業である。
2012年CRRA世界報告書大賞の統合報告書部門で1位、総合部門5位、関連性&マテリアリティ(重要性)部門4位である。
ノボノルディスクのスザンヌ・ストーマー副社長兼CSR部長は、統合報告書をこう例える。「統合報告書とは、秩序である。統合報告書のキーポイントは、統合報告書を統合マネジメントに反映させることである。反対に言えば、もし統合マネジメントがなければ、統合報告書が成功することはないし、損失を発生させ、ステークホルダーはそれを理解することになる」
◆新しい経済における企業報告書の基準をつくる
スザンヌ氏はさらにこう話す。「我々の抱負は、新しい経済における企業報告書の基準をつくること。2012年から2015年までにトリプルボトムライン報告書を完全に財務報告書に統合し、その価値を追い求める」
ノボノルディスクの統合報告書の発行の経緯は次の通りだ。1994年に最初の環境報告書を発行、NGOの求めに応じて、環境フットプリントを発表した。
1995年には、環境報告書に「生命倫理」の項目を追加、1998年には、社会的報告書を発行、1999年に環境と社会的報告書を発行、2001年には、トリプルボトムラインをベースにした報告書を発行、そして、2004年に統合報告書へと移行した。
統合報告書へ移行する一年前、2003年に3つの年次報告書を発行した。財務報告書、サステナビリティ報告書、そして、その間の存在として、小口投資家向けの財務報告書とサステナビリティ報告書の概観を掲載した報告書を発行した。
その後、その次の段階として、財務報告書とサステナビリティ報告書を残すのか、それとも2つを捨てて、1つにまとめたものを残すのかを考えたとのこと。そしてノボノルディスクは、統合報告書を発行していくことを選択した。
ノボノルディスク本社のサステナビリティ戦略チームは15人の陣営。全社の問題解決をデータ管理に依存している。チームのうち4人が、時間の半分を報告書に費やし、会計担当と伴に、年次報告書作成のプロセスの中で、データを一緒にし、統合報告書の最後のとりまとめは、サステナビリティチームが実施する。
◆マテリアリティを持たなければ、監査人がサインをしてくれない
スザンヌ氏は、さらにこう話す。「非常に難しかったのは、全世界の我々の拠点からのデータの収集である。厳格で、秩序ある非財務データを財務データと同じように集めることである。なぜならばそれは、年次報告書の中で、財務データの横に並ぶものだからである。これらは、平等に信頼性のあるものである必要がある」
統合報告を進めるにあたっては2つのキーポイントがあるとのこと。
① しっかりとしたマテリアリティ(重要性)の定義
② 基準(スタンダード)
マテリアリティを持たなければ、監査人がサインをしてくれない。そして、監査人とともに苦労し、どのように第三者保証を受けるか、何が報告書の中に必要なのかを見つける必要がある。また、ノボノルディスクが基準を持つ前は、財務報告書の一部には成りえなかったとのこと。
スザンヌ氏は、「統合報告書を進めるにあたっては、フレームワークが必要と認識している。これは、私も作業部会の一員として参加している国際統合報告委員会が現在取り組んでいる」。
国際統合報告書委員会は2012年中に公開草案の提出を目指し、GRIは、第4版であるG4を2013年5月に発効する予定で、これは、統合報告書を意識して作成を進められている。
統合報告書の道のりは、革新であり、企業全体での取組みであるという。欧州の企業も、動向を見守っている状況だが、IIRCのパイロットプログラムに参加している企業を参考に、日本の企業においては、統合報告書はまだ先の話として横に置いておくのでなく、現状のCSRへの取り組みレベルを上げるとともに、平行して調べていく必要があるのではないだろうか。
(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)
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