2015.8.31 Sustainavision Monthly News Letter Vol.27 : 森林破壊ゼロへ向けた国際的な動向

ロンドン在住CSR/サステナビリティコンサルタント・サステイナビジョンの下田屋です。

このニュースレターは、欧州・英国ロンドンからCSR(企業の社会的責任)/サステナビリティについて、ご連絡をさせていただいております。(お名刺交換をさせて頂きました方、当社主催の講習会にご参加頂ききました方、欧州CSR戦略和訳のダウンロードをして頂いた方等ご縁があった方々にご連絡をさせていただいております。)

今回は、森林破壊ゼロへ向けた国際的な動向についてご報告させていただきます。

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現在、世界では16 億以上の人々が、食料、水、燃料、薬、伝統文化、生活に関して森林に依存しているとされ、森林はCO2を吸収する重要な役割があり、森林面積は地球温暖化と密接な関係があります。このように森林は、我々にとって言うまでもなく必要不可欠、将来世代の為にもとても重要なものです。

国連食糧農業機関(FAO)「世界森林資源評価2010」によると、2010年時点の世界の森林面積は約40億ヘクタールで全陸地面積の約31%を占めていますが、2000年~2010 年は、毎年1,300万ヘクタールが消滅しているといいます(1990年代は年間1600万ヘクタール)。大規模な植林事業によって世界全体の森林純消失量は減少しているものの、依然として森林の減少が増加を上回り520万ヘクタール(コスタリカの国土面積)の森林が毎年減少しているという現状があります。

森林消失の大きな要因としては、
①森林をパーム油・大豆・木材/パルプ/紙・牛肉などの商品生産のための転用(世界の森林破壊のおよそ半分を占める)、
②非伝統的な焼き畑農業の増加、
③森林火災、
④燃料用木材の過剰な採取、など。


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Photograph: Nacho Doce/Reuters

このような中、森林破壊を食い止める国際的な動きが顕著となってきており、その中で企業責任として森林破壊を食い止めるための様々な取り組みが開始されています。

世界での森林破壊を食い止める大きな流れ
「ボン・チャレンジ」
このチャレンジは、2011年9月にドイツ・ボンにて国際自然保護連合(IUCN)とドイツ連邦環境省が「森林・気候変動・生物多様性に関するボン・チャレンジ」として共催しスタートした国際的な取り組み。生物多様性条約愛知ターゲット、気候変動枠組条約会議(UNFCCC)の森林に関する決定であるREDD+、リオ+20の森林純減少ゼロの目標を組み合わせたもので、世界の1億5000万ヘクタールの劣化した森林を2020年までに再生することを目標としている。このチャレンジには、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、エルサルバドル、エチオピア、グアテマラ、ルワンダ、コンゴ民主共和国、ウガンダ、米国などが参加している。2011年の開始以来、この取組が目標達成へと順調に進んでおり、2015年7月現在、参加国が再生を約束した森林は目標の39%の約6000万ヘクタールに達しています。

「森林に関するニューヨーク宣言」
2014年9月にニューヨークの国連本部で開催された国連気候サミットで、「森林に関するニューヨーク宣言」が行われています。これは気候変動対策における森林の重要性を確認するもので、行動を促進させるための法的拘束力のない目標を掲げた宣言、そして自主目標からなる行動指針が発表されています。日本を含む政府32カ国、20の地方自治体、40の多国籍企業(日本企業では花王が参加)、16の先住民族、49のNGOを含む市民団体が宣言を採択しています。この宣言の主要目標は、2020 年までに全世界の自然林消失率を少なくとも半減させ2030 年までに自然林消失ゼロを目指すこと、民間セクターに関係するパーム油、大豆、紙、牛肉などの農産物生産による森林破壊を遅くとも 2020 年までに食い止めること、2020年までに1億5,000万ヘクタールの荒廃した森林景観および林地を再生し、世界の森林再生率を大幅に向上させ、2030年までに最低2億ヘクタールを再生すること、など10に及びます。この宣言の目標が達成されれば、2030 年までに毎年45~88億トンのCO2排出量の削減が見込まれるようになります。現在、世界で森林が減少し続ける中、森林保全を行うことは極めて有効な地球温暖化対策となります。

この「森林に関するニューヨーク宣言」は、重要なステップであり先進的な取り組みであり期待されていますが、2020年をターゲットにするのは遅すぎるという意見、具体的な行動計画の導入の欠如や、宣言が自主的なもので法的拘束力を伴っていないなどより強い主張を行うNGOの声もあります。

企業の森林破壊ゼロへの取り組み
生産者と取引業者による森林破壊ゼロへの取り組みが始まっており、その中でパーム油の主要な世界的取引業者(世界取引の約 60%)は森林破壊ゼロ方針を採用しています。

  • ウィルマー・インターナショナル(市場シェア約 45%)は、2013 年 12 月に商品に対する森林破壊ゼロ方針を採用
  • ゴールデン・アグリ・リソーシーズ(市場シェア5%)は、2011 年にパーム油生産に対して森林破壊ゼロ方針を採用、また 2013 年 12 月にはこの方針をサプライヤーにも適用。
  • カーギル (市場シェア10%) は 2014 年 8 月に、パーム油森林破壊ゼロ方針を採用。

消費財メーカー、小売店、サービス提供者など70か国から400社が参加している世界的規模のネットワークである「コンシューマー・グッズ・フォーラム(CGF)」は、「森林に関するニューヨーク宣言」に積極的に関わっている。CGFは、2020 年までに一般消費財のサプライチェーンによる森林破壊を食い止めることをコミットメントし、さらに法的拘束力のある気候協定を呼びかけています。

木材・パルプ・紙工業では、インドネシアのアジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)は2013年に森林破壊ゼロをコミットメントする森林保護方針を作成し、さらに「森林に関するニューヨーク宣言」に署名しています。また国際NGOレインフォレスト・アライアンスと協働し、その進捗状況の独立した評価を依頼しています。レインフォレスト・アライアンス森林部門上級副委員長のリチャード・ドノバン氏は、「森林破壊をしない誓約は、透明性があり、説明可能であり、検証できることが非常に重要だ」と述べ、APPの独立した評価の実施と情報公開についての取り組みは非常に重要なケースだとしています。

このように森林破壊ゼロ方針を公表している企業の多くは、ザ・フォレスト・トラスト(TFT)やレインフォレスト・アライアンスのような国際NGOに森林破壊ゼロのモニタリングを依頼したり、調達方針を協働で作成するなどNGOとの連携を行っています。また世界の森林の状況をほぼリアルタイムでモニタリングできるツール「グローバル・フォレスト・ウォッチ」を米環境問題シンクタンクの世界資源研究所(WRI)が公開されておりモニタリングへの活用が期待されています。

世界資源研究所(WRI)によると「森林破壊ゼロ方針」を作成している企業は多くの場合、森林開発に関連する行動を制限するだけでなく、森林伐採禁止を超えた商品の生産に関する他の要素についても詳しく記載しているということです。企業の「森林破壊ゼロ方針」への一般的な内容としては、以下が含まれます。

  • 泥炭地を開発しない
  • 開発に火を使用しない
  • 保全価値の高い(HCV)領域を開発しない
  • 高炭素貯蔵(HCS)領域を開発しない
  • 先住民族の土地の権利を尊重する
  • 地域社会から自由意志による事前の説明と同意を得る
  • 合法的な土地でのみの生産
  • 強制・奴隷労働の使用ゼロ
  • 生産慣行に関する透明性へのコミットメント

マレーシアのコングロマリットであるサイム・ダービー・プランテーション(SDP)社は、パプアニューギニアにおいて持続可能なパーム油の生産でヨーロッパ市場を変革したリーダーとして活動してきたニューブリテン・パームオイル(NBPO)社を本年2月に買収。SDP社は、NBPOのノウハウを得て、森林破壊を行わない、より持続可能なパーム油生産を行っていくとしています。

先進企業の取り組みの中には調達方針の中に、FSC(森林管理協議会)やRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)の認証品の積極活用が掲げてあり、木材やパーム油の調達を100%認証品で賄うことをコミットメントしている企業もあります。しかし認証品の購入での対応にも限界があり、森林破壊ゼロを達成する方法について、完全にできるかどうか明らかではない場合でも、企業はイノベーションを含む森林破壊ゼロの取り組みが必要として認証品の購入以上の野心的な目標の設定をしているようです。

森林破壊ゼロを達成するためのプロセスは以下の5段階が考えられます。

企業の森林破壊ゼロへ向けた5段階のプロセス
企業によっては、違法な森林伐採ゼロを優先順位を高く設定しているにも関わらず、長期に渡って合法的であれば森林伐採を継続して行う企業もあることが指摘されていることや、土地利用や先住民の暮らしは業界に関わらず共通な課題であるにも関わらず、業界の縦割り的な考え方が依然としてあり、業界の垣根を越えたコミュニケーションと商品知識の共有が必要とされています。上記のステップの行動計画の中には、ステークホルダーへのアプローチにおいて、サプライヤーの労働環境や先住民族やコミュニティの人権に関する記述も必要となります。国連ビジネスと人権に関する指導原則などのガイドラインは重要であり、活用することがこの場面においても望まれています。

このような森林破壊ゼロに関わる国際的な動向の中で日本企業のプレゼンスは必ずしも高くありません。CDPフォレストを通じた機関投資家からの森林破壊のリスクに関する情報開示の要求もこれから強くなる中で調達方針を含めた森林破壊ゼロへ向けた行動を起こすことが必要とされています。
(おわり)

森林に関するニューヨーク宣言: http://www.un-redd.org/portals/15/documents/ForestsDeclarationText.pdf
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英国CSR・エシカル企業視察ツアー・レポートの販売

世界のCSR&エシカルな潮流の発信地である英国で、英国の企業やNGOがどのようにCSRやエシカルな取り組みをしているのか。どのように社会と「対話」しているのか。その最前線をオルタナ主催で7月初旬の5日間の日程で視察した際の内容をレポートとしてまとめました。
◆視察企業・団体名:
ネスレUK、マークス&スペンサー、ボディショップ、ラッシュ、グリーンピースUK、ハーミーズ(HEOS)、ガーディアン・サステナブル・ビジネス、フェアトレード、レインフォレスト・アライアンス等
◆ページ数:90ページ
◆価格:15,000円 ⇒ 8,000円 (値引きいたしました)
(電子ファイルのみの販売となります)
◆お申込み・お問合せ先:サステイナビジョン
http://www.sustainavisionltd.com/2014-uk-csr-ethical-companies-visit-report/

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<イベント情報>

【Global Initiativesイベント】
Business for the Environment, Climate Summit 2015の開催
B4E-LONDON_300x250
企業、政府、メディア、NGOから400人を超えるグローバルリーダーが終結、エネルギー効率、新興技術、資金調達や政策変更のための長期的な展望を議論します。
日時:
 2015年9月9日(水)・10日(木)
場所: 英国ロンドン
参加費: 500ポンド
参加登録はこちらから:  http://b4esummit.com/b4e-climate-summit-2015/
※詳細PDFはこちらからダウンロード

・Responsible Business Forum 2015
日時:2015年11月2日~4日
場所:MARINA BAY SANDS, SINGAPORE
Website: http://www.responsiblebusiness.com/forum/
※このイベントへの参加、スピーカー、スポンサーにご関心ある場合には、弊社へご連絡ください。
→ こちらから  http://www.sustainavisionltd.com/contact/

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【Innovation Forum イベント】

・How business can tackle deforestation
A make or break issue for Asia’s corporate reputation?
28th-29th September 2015, Singapore

・How business can tackle deforestation
Innovation in Sustainable Forestry: Technology, Risk and Collaboration:2nd–3rd November 2015, London

・Why current consumer engagement fails – and how to fix it
Two days of difficult debate about reality and solutions
9th-10th November 2015, London

・Ethical trade and human rights forum
Transforming supply chains for responsible business at scale
19-20 October 2015, London, UK
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【Ethical Corporation イベント】

・Compliance and Conduct Risk in Insurance Summit
5-6th November 2015 • Tower Grange Hotel, London

・The 9th Annual CR Reporting and Communications Summit
10-11th November 2015 • Tower Bridge Hilton

The 10th Annual Sustainable Supply Chain Summit Europe
10-11th November 2015 • Tower Bridge Hilton

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<編集後記>

今回私は日本の夏を8年ぶりに体験いたしました。日本はロンドンに比べてやはりめちゃくちゃ暑かったです。暑さで汗が自然と出てくる状態を久しぶりに体験、特に湿度が違ってやはり高いですね。。。。。

さて、今回の森林破壊ゼロへ向けた国際的な動向ですが、気候変動にも関わる重要な話で、企業は資源として購入している紙・パルプなどがサプライチェーン上でどこから来ているのか非常に重要となります。是非御社の中で、森林破壊ゼロについての取り組みがあるか確認してみてください。

また、この記事に関連するものとして、「アース・オーバーシュート・デー」がありますが、皆さんご存知でしょうか?

これは、人間による自然資源の消費量が地球が1年間に再生産できる量をほぼ超えた日のことを指します。そして今年の「アース・オーバーシュート・デー」は8月13日だったということです。※1
(2012年:8月23日、2013年:8月20日、2014年:8月17日と年々早まっています)

つまり8月13日以降は、将来の世代の資源を消費しているということになります。これは自分達が資源を大量に消費し、そのつけを子供・孫など将来の世代へ廻して、私達は、現在の豊かな状況を享受しているということになるのです。我々は普通に生活をしていれは、問題なく過ごすことができてしまっているかもしれません。しかし、世界で起こっているこのような現象を自分のこととして考えていかなければ、持続可能な社会を構築することが難しくなっています。自分の行動、そして、企業の行動を変えて行かなければならないのです。是非自分のこととして考えて日頃の小さな行動から変えていきましょう。
※1参考URL(WWFJapan):http://www.wwf.or.jp/activities/2015/08/1276913.html

(サステイナビジョン下田屋)

Takeshi Shimotaya for Alterna

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<英国IEMA認定サステナビリティ(CSR)資格講習の開催>
日時:2015年10月15日(木)・16日(金)
両日とも9:00~17:00
場所:東京

既にお申込みが始まっており、残席が少なくなってきております。参加をご検討いただいている場合には、お早目にお申込みください。
早割(2015年9月25日迄):10%
団体割引、NGO/NPO、大学関係者、公務員、中小企業割引あり
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サステイナビジョン ( Sustainavision Ltd. Company No. 7477687)
下田屋 毅
Takeshi Shimotaya (MBA, MSc, CSR-P, 環境プランナーER)
Managing Director, Japan Foundation London CSR Seminar project adviser
ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当科目:CSR)
住所: International House, 24 Holborn Viaduct, City of London,
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Website: http://www.sustainavisionltd.com/
Twitter: @tshimotaya
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