NGOとの協働が企業の信頼性を高める ――下田屋毅の欧州CSR最前線(30)
日本企業のCSRの取り組みの中で、NGO・NPOとの協働を実施する例が増えてきた。しかし、まだその取り組みが弱い印象があるのはなぜか。今回は欧米の企業がどのようにNGOと協働しているのか、何がポイントなのかをお伝えしたい。Yahoo Japan and Alterna online carries Sustainavision Managing Director Mr Shimotaya’s article “Working with NGO improves company’s trustworthiness ” on 12th of July 2013 (Japanese site).
日本では、企業はNGO・NPOに対してどのような印象を一般的に持っているのだろうか?
1995年、グリーン・ピースなどの環境NGOが、ロイヤルダッチ・シェルの北海のブレントスパーと呼ばれる海底油掘削施設の解体方法に対する抗議行動・不買運動が過激に報道された例に代表されるように、日本では、国際NGOは一般的に、企業に対してプレッシャーをかける敵対関係にある組織のように感じられていることが多いのではないだろうか。
NGOは、企業の反社会的行為に対して、不買運動やネガティブキャンペーンを実施するなど、企業のCSRに大きな影響を与えてきている。NGOの過激な行動のみフォーカスされるが、本来NGOは市民の代表であり代弁者である。市民の代弁者であるNGOは企業活動を監視し、企業が反社会的行動をしないように常にプレッシャーをかけているのである。
元WWF-UK企業教育マネージャーで、現在英国テラフィニティ社パートナーのジョス・タントラム氏は、「欧州では、NGOの方が市民からの信頼度は高く、企業の信頼度は低い。そのため、企業は信頼性を高める為にNGOと協業し、ステークホルダーからの信頼性を高めている」と話す。また、NGO・NPOはそれぞれの分野の専門性が高いと認識されていて、企業はNGOに対してその専門分野におけるコンサルティングを依頼するケースもある。
このように海外では、企業がNGO・NPOと協働する理由が存在しているのである。
NGOとの協働のタイプ
アクセンチュア、ワールドビジョン、パートナーリングイ・ニシアチブらが2008年に実施したNGOに関する共同調査によると、NGOと企業の協働する理由のタイプは以下の6つがあるという。
- スポンサーシップ(寄付など)
- マーケティング(コーズ・リレーテッド・マーケティングなど)
- キャパシティビルディング(従業員エンゲージメント、社内外の能力開発)
- ブローカー(大規模なスケールでのイニシアチブの促進、地域パートナーシップの促進など)
- アドボカシー(問題解決に向けたキャンペーン、政策変更を目的とした戦略的パートナーシップなど)
- ビジネス(アドバイザリー・サービス、社会的企業開発、BOPなどの技術的開発支援)
上記からNGOと協働する上で自社としてなぜその協働が必要なのかを明確にする必要がある。
ビジネス・イン・ザ・コミュニティ(BITC)国際部長のスー・アドキンス氏は、NGOとの協働において「企業の能力、企業に何ができるか、についてNGOに率直に話しかけること。」また、「企業自身を偽らないこと。企業活動においてすべて良いことをしているふりをしない、そして、自社のビジネスケースを説明することを回避しないこと」と話す。
NGOと協働する際に必要なステップ
NGOとの協働で必要な項目は以下についてあげられる。
1. 企業のNGOとの協働の理由の明確化
2. 適切なパートナー選択
3. 自社とNGOとの違いの認識
4. NGOとの協働における企業側の体制の整備
5. NGOとのエンゲージメントを本業へ統合
6. 企業とNGO間のコミュニケーション計画の策定
7. NGOとの関係の構築プロセス、相互理解/発展の計画の策定
8. 協働事業の評価の為のベンチマークの確認
企業のNGOとの協働の理由の明確化
そもそもなぜ企業がNGOと協働することが必要なのかを社内で明確にする。NGOとの協働では、モチベーションが鍵となる。社会貢献に対する思い、リスクの軽減、良い評判の構築、協働がどう影響するか、など企業がNGOとの協働に必要な理由、モチベーションの確保が重要となる。
適切なパートナー選択
NGOとの協働の上で、まずは自社に合う適切なパートナーであるかを確認することが最初のステップとなる。お互いがフィットする部分を見つけられれば、協働作業はスムーズに運用される。すべてのNGOは、それぞれの専門分野、そして長所と短所を持っている。国際NGO、ローカルNGOのどちらが適切か、また、サービスの提供が得意な団体か、それともキャンペーンが得意な団体かなども確認する必要がある。企業が、自社の業務提携と同様に、デュー・ディリジェンスの活用により可能性を絞り込むことが必要だ。
自社とNGOとの違いの認識
基本的に企業とNGOがそれぞれの言語、組織、ビジョン、価値観などの違いを認識することは、相互の信頼関係の構築にも関わる。海外では、企業とNGOとの違いを理解するために、NGO経験者やベテランの雇用を実施。NGO経験者は、NGOの立場を理解しているので、企業とNGOとの協働をうまく引き出すことができる。
NGOとの協働における企業側の体制の整備
NGOとの協働は、企業には新しい方法・戦略であり、社内の体制の構築が求められる。NGOは企業がこの関係を真剣に考え、体制構築をするか観察していることも忘れてはいけない。
NGOとのエンゲージメントを本業へ統合
パートナーシップは、独立したものとして維持されるというよりも、徐々に企業の機能に統合されるのが望ましい。企業のパートナーシップが機能するのは、企業の中核戦略・スキルにマッチしていることである。
企業とNGO間のコミュニケーション計画の策定
お互いがどのようにコミュニケーションを図って、エンゲージメントまで実施していくことが可能となるか、どの媒体でコミュニケーションを図っていくことがお互いにとって実施しやすいかを確認し、コミュニケーション計画を立てることが重要である。また、定期的なミーティングの開催は、パートナーシップが双方にとって有益であるか、また、今後期待する結果を出していけるかを評価するための方法としても位置付けられる。
NGOとの関係の構築プロセス、相互理解/発展の計画の策定
NGOとの協働は一朝一夕に結果がでるというものではないし、それぞれの条件、環境、興味、立場は変わっていくものである。時間をかけて双方の理解を進めて、とともに進化する関係を構築することが大切。
協働事業の評価の為のベンチマークの確認
企業とNGOは、パートナーシップの評価・見直しについても考慮が必要。契約・覚書に再評価の項目を入れることも必要だ。
市民社会における最先端のニーズというのは絶えず変化し多様化しているが、NGO・NPOはその社会のニーズの最先端で活動をしており、NGOとの協働はその社会の最先端ニーズの変化を内部化することができるということである。自社がなぜNGOと協働するのか、その理由を明確にするとともに、上記を踏まえNGO・NPOとの良好なパートナーシップの構築を検討していただきたい。
(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)
Yahoo Japanへのリンク:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130712-00000304-alterna-bus_all
オルタナオンラインへのリンク:
http://www.alterna.co.jp/11333
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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130712-00000304-alterna-bus_all
ALterna online link:
http://www.alterna.co.jp/11333