2017.2.22 Sustainavision News Letter Vol.38:欧米先進企業がサプライヤーを公開する理由

2017.2.22 Sustainavision News Letter Vol.38:欧米先進企業がサプライヤーを公開する理由

英国在住サステナビリティ/CSRコンサルタント・サステイナビジョンの下田屋です。寒暖が激しく体調を崩しやすい時期だと思いますが、そのような中どのようにお過ごしですか?

このニュースレターは、欧州・英国ロンドンからCSR(企業の社会的責任)/サステナビリティについて、ご連絡をさせていただいております。(お名刺交換をさせて頂きました方等ご縁があった方々にご連絡をさせていただいております。)

さて、昨今欧米企業の小売店やアパレル関連のブランド企業が中心にサプライヤーを公開する動きが出てきています。しかしこれらブランド企業が率先して、サプライヤー工場リスト、サプライヤーマップを公開する理由はどうしてでしょうか?今回は、この「欧米のブランド企業がサプライヤーを公開する理由」をお伝えさせていただきます。

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昨今、欧米企業の小売店やアパレル関連のブランド企業が中心にサプライヤーを公開する動きが出てきています。しかしこれらブランド企業が率先して、サプライヤー工場リスト、サプライヤーマップを公開する理由はどうしてでしょうか?

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実はアパレル・ブランド企業が委託する発展途上国のサプライヤーでの強制労働、児童労働が1990年代後半に発覚し、NGO・市民団体が問題視し、2000年頃からこれらブランド企業に、製品を製造する全ての工場名と住所を公開するよう求めてきた経緯があります。

しかしこれらブランド企業は当初、自主的であろうと、政府の規制であろうとサプライヤーの開示に強く反対していました。しかし欧米におけるNGO・市民社会などの継続した活動や、地方自治体の購買方針の変更などもあり、サプライチェーンの透明性に対する要請やプレッシャーが高まってきたことがあります。そしてブランド企業がサプライヤー工場を開示することが、デメリットよりもメリットがあることが分かってきたこともあり、現在のように公開するようになってきているのです。

Marks & Spencer Supply Chain Map

メリットとしては、ブランド企業の透明性を示すことができる点が挙げられ、サプライヤーとの関係性や配慮に自信をもっていることを表すことができる点があります。もちろんメディアやNGOがこれらリストのサプライヤー工場に赴き、法令順守の状況や労働環境などを確認することができてしまうこともあり、これらをデメリットとして捉える考え方もあるかもしれません。しかしブランド企業が現段階でサプライチェーンの全ての工場を完璧にチェックすることは難しいとされています。そこでメディアやNGO、労働機関にサプライヤーを公開することで、透明性を高め、責任の所在をはっきりさせるとともに、問題があればそれらをすぐに是正する姿勢を取っているのです。

デメリットとしてはこれらブランド企業の競合他社が、リストに掲載されているサプライヤーへ行き、製品調達を依頼できることがあります。しかし、ブランド企業によっては公開しているサプライヤーとは関係が非常に深く、工場の生産量のほぼ全てを調達している場合もあり、入り込むのは難しい場合が多いようです。また生産量の全てを調達していない場合には、他のブランドともサプライヤーを共有することになりますが、労働環境改善について協働することを逆に強みにしている部分もあります。

これらのブランド企業は、サプライヤーの公開においてもリーダーシップを発揮し、他企業へも良い影響を与えることを考えていますが、これが大手ブランドとしての競争力に上積みされ、企業責任の取り組みを進めることでさらにブランド力を向上させることができるようになっています。

現段階では、ブランド企業の情報開示は直接のサプライヤーである一次サプライヤーに限定されていますが、公開はしていなくとも、実際にはブランド企業は一次サプライヤーだけでなく取引量の多い二次サプライヤーや、カントリーリスクが高い国のサプライヤーをより考慮して管理を行っています。また一次サプライヤーと密接にコミュニケーションを行い協働することで、その上流のサプライヤーにも良い影響を与えることを考えています。またこれらサプライヤー開示のトレンドは、今後最終製品を販売する大手ブランドを中心に徐々に増加していくことが予想されます。そしてブランド企業が情報開示を行い透明性を確保することで、サプライヤーのより良い労働環境の確保にもつながっているのです。つまりサプライチェーンの透明性を高めることで、ブランド企業もより敏感に配慮することが必要となることがあります。またもしメディア、NGO、労働機関が、労働者の権利侵害が行われている工場を発見した場合には、ブランド企業が公開したリストからも特定することができ、それらサプライヤーの違反行為を、最終製品を販売するブランド企業の責任として改善を促すこともできるということです。また現状ではもしサプライヤーが違反行為をしていたことが発覚した場合、ブランド企業はこの件を理由にすぐに手を切ってしまうのではなく、ブランド企業の責任としてこのサプライヤーを教育し改善させることも市民社会から期待されています。

このように現段階では、サプライヤーを公開しているブランド企業は、サプライヤー工場の違反行為が発見されてしまうことがリスクではなく、見つからないことのリスクを重視しているのです。そして自社のサプライヤー管理を透明性を持って、イニシアティブなどを活用して取り組みを進めることは前提条件ですが、違反行為が発見されたら、迅速に現状確認を行うとともに、真摯に改善に取り組みを行うことが現在のトレンドになってきています。(了)

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<サステイナビジョンからのお知らせ>

<第3回 ビジネスと人権研修>
企業が関わる人権の問題は、国境を越えサプライチェーン上においてもカバーしなければならない最重要項目であり、海外の取引しているサプライヤーの労働者の権利侵害、強制労働、児童労働を訴えられ、メディアで取り上げられることも実際に起こっています。
そのような中、2011年6月に国連人権理事会にて「ビジネスと人権に関する指導原則」が承認され、国際的なガイドラインとして世界の中心的な位置づけがなされ、国と企業はそれぞれ役割を果たさなければならない状況となっています。しかし日本は欧米先進企業と比較するとその取り組みに未だ温度差があり、人権のリスクの認識と対応が遅れており、今後リスクが顕在化する懸念もあります。
そこで本研修では、海外において開催されているビジネスと人権研修を昨年、一昨年に引き続き日本においても開催し、グローバルでの人権課題について、それぞれの企業の現状に合せた簡潔で実践的なアドバイスを提供いたします。
※席に限りがございます。申込みを検討されていらっしゃる方はお早めにお申し込みください。

・とき: 2017年3月10日(金)・11日(土)両日とも9:00~17:00
(コース終了6ヶ月後の振り返りを行う1日学習も含み、計3日間となります)
・ところ: 東京都港区(お申し込み者に事務局よりご連絡致します)
・対象者: CSR部門、人事部門、資材・調達部門、広報部門、法務・コンプライアンス部門など
・定員: 16名
・主催: サステイナビジョン
・講師: ルーク・ワイルド氏(Twenty Fifty社エグゼクティブ・ディレクター)、下田屋毅氏(サステイナビジョン代表取締役)
・お申込み・お問い合わせ⇒ http://www.sustainavisionltd.com/bandhr/
※詳細説明PDF:http://www.sustainavisionltd.com/wp-content/uploads/2016/12/Business-Human-Rights-training-Mar2017-V1.pdf
※団体割引、NGO/NPO、大学関係者、公務員、中小企業割引、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン特別割引あり

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<第14回サステナビリティ(CSR)プラクティショナー資格講習>
世界のCSR/サステナビリティ分野では非常に大きな動きが起きています。欧米の先進企業は、地球規模で発生している気候変動などの環境課題への対応、またサプライチェーンを取り巻く環境問題、そして人権問題に対応するために、CSR/サステナビリティを中核に据えた企業戦略を打ち出しており、この認識・行動が遅れている企業は今後淘汰されてしまうかもしれません。本講習では、ロンドン在住CSRコンサルタントが講師として、欧米企業が何故CSR/サステナビリティに取り組むのか、またそのトレンドを踏まえて、最新事例とともにCSR/サステナビリティを事業戦略に統合する方法をお伝えいたします。

・日時:2017年3月24日(金)・25日(土) 両日とも9:00~17:00
・場所:東京都港区
・定員:15名
※団体割引、NGO/NPO、大学関係者、公務員、中小企業割引あり
お申込み・お問合せはこちら

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<イベント情報>
 【Innovation Forum イベント】
弊社とInnovation Forumとの提携によりコード「 SustVision15」をお申込みの際に入力されますと以下のイベントが15%割引となります。

・How business can tackle modern slavery and forced labour
Understanding the risks and taking proactive action to eradicate slavery from operations and supply chains
開催日:2017年4月25日・26日
場所:ロンドン
※企業が、現代の奴隷制と強制労働にどのように取り組むことができるのか、リスクを理解し、サプライチェーン上の奴隷を根絶するための行動についてなどを議論します。

Sustainable apparel forum
How brands can gain from engaging with the social and environmental challenges facing the apparel industry, from start to finish.
・開催日:2017年6月13日・14日
・場所:アムステルダム
※アパレル業界が直面している社会・環境課題にどのように取り組むことができるのかを議論します。

【JETROアジア経済研究所イベント】
「『ビジネスと人権に関する国連指導原則』にもとづく日本の行動はどうあるべきか——国別行動計画の策定へのマルチステークホルダーエンゲージメント」
JETROアジア経済研究所では、3月1日(水)13:30~にジェトロ本部5階 展示場において、「『ビジネスと人権に関する国連指導原則』にもとづく日本の行動はどうあるべきか——国別行動計画の策定へのマルチステークホルダーエンゲージメント」開催いたします。
ビジネスと人権に関する国連ワーキンググループ. 議長ダンテ・ペセ氏や、Ethical Trading Initiativeのピーター・マクアリスター氏らが講演します。非常に貴重な機会ですので、是非参加し、ビジネスと人権について理解を深めていただければと思います。
・開催日・時間 2017年3月1日(水)13:30~17:35
お申込みは、次のリンクからお願いいたします。
http://www.ide.go.jp/Japanese/Event/Sympo/170301.html

<サステナブル・ブランド国際会議2017東京>
11カ国12都市で開催されている「サステナブル・ブランド(Sustainable Brands)国際会議」が東京でも開催されます。先進事例に学び、ディスカッションを通した交流ができる場として是非ご参加ください。
・開催日 2017年3月8日・9日
・場所 東京ミッドタウン・ホール
http://www.sustainablebrands.jp/event/sbt2017/
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<編集後記>

今回もニュースレターをお読みいただきありがとうございました。
今回はサプライヤーを公開する理由について、日本経済新聞から昨年末取材を受けたこともあり、その際に英国で関係者に確認するなど調べた上で自分の見解を述べさせていただきました。サプライヤーマネジメントの難しさがある中で、どこまで実施していけば良いのか悩ましいところだと思いますが、サプライヤーの労働関係で問題がでている産業については、NGO/市民社会からの働きかけもあり、欧米企業の意識も高く、取り組みも進められてきています。日本との意識の温度差がある場合には、取り組みもその分遅くなることがありますので、グローバル企業として自社においてどのように考える必要があるのか、自社の位置づけはどのあたりかという視点で考えてみることも良いかもしれません。
さて私は現在、日本企業の社内研修等を請け負わせていただいたこともあり日本に滞在をしております。3月は講習会の開催や国際会議への参加もあり4月中旬まで日本にいる予定としています。
来月3月は、いろいろイベントがたくさんありますが、まずお伝えさせていただきたいのは、3月1日に、JETROアジア経済研究所主催の『ビジネスと人権に関する国連指導原則』にもとづく日本の行動はどうあるべきか——国別行動計画の策定へのマルチステークホルダーエンゲージメント」が開催されます。ビジネスと人権に関する国連ワーキンググループ議長ダンテ・ペセ氏や、Ethical Trading Initiative(ETI)のピーター・マクアリスター氏らが講演します。非常に貴重な機会ですので、是非参加し、ビジネスと人権について理解を深めていただければと思います。私は、今回ETIのピーター氏のサポートに入っておりますので、当日も参加する予定としていますので、現地でお会いできればと思います。
また3月8日(水)・9日(木)にサステナブル・ブランド国際会議東京が開催されます。この会議で私は9日(木)のF-4セッション(17:30~18:30)で、「グローバルビジネスと人権」でファシリテーターを務めさせていただきます。ビジネスと人権に関する指導原則の欧米先進企業の取り組みや日本企業との取り組みそしてそのギャップを埋めるために何をしたらよいのか。ここでディスカッションを行います。是非ご参加ください。
また、3月10日(金)・11日(土)に、今年で3回目となる「ビジネスと人権研修」を開催いたします。今回もtwentyfiftyのLuke・Wilde氏が来日して、私と一緒に研修を実施いたします。指導原則にどのように取り組みをしたら良いか考えている企業様は是非この機会に参加をご検討ください。欧米の多国籍企業のビジネスと人権の取り組みをサポートしているLuke氏から2日間アドバイスを受けることができるチャンスですのでお見逃しなく。
3月初旬は、いろいろなイベントが目白押しですが、是非会場でお会いできればと思います。
現在は日本と英国・他の滞在が1年のうち半分半分になっておりますので、日本でお会いすることができる機会が多いと思います。是非見かけられましたらお声かけいただければ幸いです。

(サステイナビジョン下田屋)

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最近の寄稿記事はこちらから

【オルタナオンライン&CSR Today】
・欧米企業はなぜサプライヤーを公開するのか?–下田屋毅の欧州CSR最前線(55)
シリア難民の児童労働、企業イニシアティブが必要–下田屋毅の欧州CSR最前線(54)
・世界で加速する人権への関心–下田屋毅の欧州CSR最前線(53)

・現代の奴隷?英国現代奴隷法の日本企業への影響–下田屋毅の欧州CSR最前線(52)
・加速する世界の水リスク対応―協働からイノベーションへ–下田屋毅の欧州CSR最前線(51)

【サステナブル・ブランド・ジャパン】
欧米企業はなぜサプライヤー公開するのか
シリア難民の児童労働、企業イニシアティブが必要
・世界で加速する人権への関心
・現代の奴隷?英国現代奴隷法の日本企業への影響
・世界の水リスク対応は協働からイノベーションへ

【環境会議】
2016年秋号:マークス・アンド・スペンサーの戦略的CSRと経営

【東洋経済オンライン】
ここが変だよ!日本のCSR

【Sustainable Japan】
・第5回国連ビジネスと人権フォーラム(速報)~下田屋毅氏の欧州CSR最新動向~
英国現代奴隷法、日本企業はどう対応するべきか~下田屋毅氏の欧州CSR最新動向~
第4回国連ビジネスと人権フォーラム参加報告~下田屋毅氏の欧州CSR最新動向~

【CSOネットワーク】
・ 「第4回国連ビジネスと人権フォーラムについて(報告)」
エレン・マッカーサー財団インタビュー

【レスポンスアビリティ”サスナビ!”】
・ 欧州ここだけの話

【サステナビリティ・コミュニケーション・ハブ】
・共感を呼ぶ、行動につなげる「サステナブル・ストーリングテリング」
・企業のESG情報はどのように収集・活用されているか(ブルームバーグ)
・マークス&スペンサーが実践するサステナビリティ

【ZUUオンライン】
・現代に潜む「奴隷制」ーー世界が日本企業の対応を注視している 
企業は新興国とどのようにビジネスすべきか
SDGs は企業の世界戦略の新潮流となるか
・日本企業が見習うべき「欧州CSR優良企業」5選(後編)

【シータス&ゼネラルプレス】
・CSVとネスレの人権に関する取り組み:後編(2014/5/6)
・CSVとネスレの人権に関する取り組み:前編(2014/5/6)

【ブレーンセンター】
英国現代奴隷法、日本企業はどう対応するべきか
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性

 

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サステイナビジョン ( Sustainavision Ltd. Company No. 7477687)
下田屋 毅
Takeshi Shimotaya (MBA, MSc, CSR-P, 環境プランナーER)
Managing Director, Japan Foundation London CSR Seminar project adviser
ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当科目:CSR/サステナビリティ)
住所: International House, 24 Holborn Viaduct, City of London, London EC1A 2BN, The United Kingdom
Website: http://www.sustainavisionltd.com/
Twitter: @tshimotaya
Facebook: http://www.facebook.com/sustainavision
在英日本商工会議所会員企業
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