2015.6.26 Sustainavision Monthly News Letter Vol.25 : トリプルボトムライン

2015.6.26 Sustainavision Monthly News Letter Vol.25 : TBLを実践する世界のリーダー

大分ご無沙汰しております。ロンドン在住CSRコンサルタント・サステイナビジョンの下田屋です。

さてこのニュースレターは、欧州・英国ロンドンからCSR(企業の社会的責任)につきまして、ご連絡をさせていただいております。(お名刺交換をさせて頂きました方、当社主催の講習会にご参加頂ききました方、欧州CSR戦略和訳のダウンロードをして頂いた方等ご縁があった方々にご連絡をさせていただいております。)

今回は、トリプルボトムラインを実践する世界のリーダー「ノボノルディスク社」についてその取り組みについてお聞きしましたので、ご報告させていただきます。

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ノボノルディスクは、糖尿病ケアを90年以上にわたって研究開発をしてきた、糖尿病分野の世界的リーダーで、デンマーク・コペンハーゲンを本社に持っています。製品は5大陸180か国以上で販売され、従業員は世界75カ国に現在4万1900人。血友病と成長ホルモン不全のケアでも著しい貢献をしています。

トリプルボトムラインビジネス原則
同社は、トリプル・ボトム・ライン(Triple Bottom Line: TBL)を企業の経営方針とする、CSRの世界的リーダーです。トリプル・ボトム・ラインとは、社会への責任、環境への責任、財務上の責任にバランスをとり意思決定する考え方で、ノボノルディスクでは、その中心に患者さんを据えています。そしてTBLの方法で経営することが、持続性(サステナビリティ)につながるとも考えています。(図)「グローバル100最も持続可能な企業」に上位で選出され、統合報告書は、英国コーポレート・レジスター社が主催する企業責任報告賞において、この賞が始まった2007年から14年まで統合報告部門で(不参加の2011年を除き)1位を獲得、統合報告における先進企業です。

ノボノルディスク全グループのCSR/サステナビリティに関する業務を統括する「コーポレート・サステナビリティ・チーム」は15名。年次(統合)報告書、共有価値創造、環境、人権、ステークホルダーへの情報発信、社内教育、ソーシャルメディアについて担当を分けカバーしています。TBLは2004年以来同社の定款に正式に明記されている上、ノボノルディスク・ウェイという企業価値観にもしっかり組み込まれています。

同社の経営トップは、非常に明確な権限をコーポレート·サステナビリティ・チームに委託しています。TBLが、ノボノルディスクの世界中の事業のすべての部門で、工場生産者と販売員から取締役会までに渡り、実践されていくことを推進、調整し、挑戦する役を、チームは担っています。そして、従業員エンゲージメントの方法として、社内誌、イントラネット、ビデオ、ポスター、イベントなどの方法を活用しています。中でも「TBLクォータリー」と呼ばれるニュースレターを四半期に一度社内外のステークホルダーへ発行、従業員自身の経験を共有するにあたり、ストーリーテリングを使用し説得力のある方法で伝える努力をしています。スザンヌ・ストーマー副社長は、「コミットメントし、言動と行動の一貫性を示すことが、全指導者の最も重要な役割である。」「TBLとサステナビリティが、「追加で行うこと」「できたら良いこと」として見られることが最大の障害となる。我々のビジネスにとって「しなければならないこと」として提示し、ビジネスの一環として取り組む。」と話します。

統合報告書の導入
年次報告において、ノボノルディスクは早くから統合報告書に取り組んできました。1994年に最初の環境報告書を発行、NGOの求めに応じて、環境フットプリントを発表。1995年には、環境報告書に生命倫理を追加、1998年には、社会的報告書を発行、1999年に環境と社会的報告書を発行、2001年には、TBLをベースにした報告書を発行、そして、2004年に統合報告書へと移行しました。統合報告書とは、年次報告書(財務情報)とCSR報告書(非財務情報)が掲載された報告書のことですが、合冊を意味するものではなく、長期的経営戦略に環境・社会的要素の関連づけがなされ、企業活動を行うプロセスの中で環境・社会的価値を生み出すものであり、主に投資家を対象としています。ストーマー副社長は、統合報告書をこう例えます。「私は、我々のビジネスが焦点を当てている糖尿病と統合報告書を時々比較する。それは、慢性で、進行性で不可逆である。一旦あなたが統合報告の作業始めると、あなたが実施する全てが変化することを意味する。そして改善するために常に進歩することが必要となり、引き返すことができない。従って、統合報告に挑戦するための大きな一歩であり、慎重に影響を考慮しなければならない。」

またストーマー副社長は、「統合報告には、統合思考が必要となる。統合報告を始め、その後徐々にビジネスのプロセスにサステナビリティの思考を組み込んでいくこともできる。基準が存在していないか長期間に渡り標準規格が存在していない実験を行っていく必要がある。あなたは、経営トップのサポートとプロセスを駆動するためのチームが不可欠。」と話します。

ノボノルディスクは、2010年に設立された国際統合報告評議会の2011年から開始されたパイロットプロジェクト(世界から約100社が参加)の一員として世界で最も先進的な統合報告書を発行し内外認める中心的な役割を果たし牽引してきました。このパイロットプロジェクトで他社との連携を行う利点として最も重要なことは、一緒に学び、痛みを共有することができるということだといいます。困難を克服し、よりスマートな方法をプロジェクトから学び、様々な分野からの参加があるが課題の多くは同じで、取り組みが困難なことを共有することができるのは非常に貴重だということです。

人権への取り組み
ノボノルディスクはTBLの一環として、長年人権にも取り組んでいます。1998年には、国際人権規約に基づいて人権影響評価を実施。以来「雇用の平等」「職場での安全衛生」「サプライチェーン」「医療へのアクセス」の4つの分野に焦点を置いてきました。現在は、2011年に発行された国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、改めて活動を仕切り直しています。2011年にギャップ分析を実施、指導原則に合致していくよう、行動計画を作成し、人権方針を改正しました。また2014年には、世界中の従業員の人権を保障するための「グローバル労働ガイドライン」を人事部が中心となって作成しました。2014年初めからは、包括的な人権影響評価・人権デューディリジェンスを実施しています。本社から始め、2014年は縦割りで13部署をカバー。2016年は世界各国支部で実施する予定です。「人権影響評価をTBL評価の一環として実施することを考えている。国ごとに異なる人権リスクに効率的に対処できるように、また支部もビジネス価値を持って利用できやすい形で実施できるかが課題になる。」と、コーポレート・サステナビリティ・チームの人権担当のブレッシング佳純氏は話します。

責任ある調達では、リスクをもとに優先順位の高い(リスクが高く、購入額が高く、依存している)サプライヤーを選出し、監査の他研修も行っている。この監査には、環境、人権等の観点も含まれます。現在は、それをビジネスと人権に関する指導原則に合致するように改善している最中とのこと。ブレッシング氏は、指導原則の調達部門への導入を行い、調達部門が主導で展開していくということです。このようにノボノルディスクには、コーポレート・サステナビリティ・チームが音頭をとり、それぞれの部門に落とし込んでいく歴史があります。

企業倫理の順守
また、ノボノルディスクは社会的責任の一環として、企業倫理の順守を世界中で徹底しています。支社を含む各組織の経営トップが常に重要性を強調し、全世界の全従業員は、毎年企業倫理の研修を受けることが義務づけられています。2014年は、この研修を必須とする従業員の98パーセントが企業倫理の試験を受けて完了しました。

再生エネルギーへの転換
ノボノルディスクは、ビジネスの成長に伴い生産数量が増加するにあたり、少ない資源でより多く生産することが重要だと考え、2006年、WWF(世界自然保護基金)との協定において、2014年までに2004年のレベルからCO2排出量を10%削減するという目標を掲げました。世界の生産拠点におけるエネルギー消費構造を見直し、各所改善活動や再生可能エネルギーへの転換を通じて、廃棄物やCO2排出量を削減しています。2009年にこの目標を前倒しで達成し、現在も維持しています。

事業の成長と環境負荷の関係を遮断する

日本国内にある郡山工場(所在地:福島県郡山市)においても、継続的改善による削減活動に加え2014年には、電力消費によるCO2総排出量を再生可能エネルギー(バイオマス発電、風力発電)への転換により2005年比25%まで削減しています。

このようにノボノルディスクは、統合報告書の先駆者として、そしてTBLを実践する良い事例です。是非参考に取り組みを始めて頂ければと思います。(了)

図・グラフ:ノボノルディスクファーマ株式会社様ご提供

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英国CSR・エシカル企業視察ツアー・レポートの販売

世界のCSR&エシカルな潮流の発信地である英国で、英国の企業やNGOがどのようにCSRやエシカルな取り組みをしているのか。どのように社会と「対話」しているのか。その最前線をオルタナ主催で7月初旬の5日間の日程で視察した際の内容をレポートとしてまとめました。
◆視察企業・団体名:
ネスレUK、マークス&スペンサー、ボディショップ、ラッシュ、グリーンピースUK、ハーミーズ(HEOS)、ガーディアン・サステナブル・ビジネス、フェアトレード、レインフォレスト・アライアンス等
◆ページ数:90ページ
◆価格:15,000円     ⇒ 8,000円
(電子ファイルのみの販売となります)
◆お申込み・お問合せ先:サステイナビジョン
http://www.sustainavisionltd.com/2014-uk-csr-ethical-companies-visit-report/

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Business for the Environment, Climate Summit 2015の開催のお知らせ
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ロンドンで第5回目となる気候変動に関するイベントになります。今回は、パリでのCOP21を控え非常に関心が高まっている中、企業、政府、メディア、NGOから400人を超えるグローバルリーダーが終結、エネルギー効率、新興技術、資金調達や政策変更のための長期的な展望を議論します。
日時:
 2015年9月9日(水)・10日(木)
場所: 英国ロンドン
参加費: 500ポンド(7月31日までは40%割引あり)
参加登録はこちらから:  http://b4esummit.com/b4e-climate-summit-2015/
詳細PDFはこちらからダウンロード

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<編集後記>

冒頭でも触れましたが、ニュースレターの発行について大変ご無沙汰してしまいました。皆様におかれましてはいかがお過ごしだったでしょうか?

現在はロンドンに戻っておりまして、ロンドンは、最近は天気が良く非常に気持ちがいいです。気温は日中で20度前後と過ごしやすく、日照時間もかなり長く夜は10時近くまで明るくなります。ロンドンは今が一番良い時期かもしれません。
昨年のこの時期には、英国CSR・エシカル企業視察ツアーをオルタナさんとの協働で開催したのですが、本当につい最近のように感じられます。マークス&スペンサーやネスレUK、ボディショップなど先進企業15社を5日間で回り非常に濃密な時間だったことを覚えています。オルタナさんでは、今年はアメリカのツアー「米国グリーンネイバーフッド視察ツアー」を予定されているようです。私は残念ながら参加できませんが、実りあるツアーであることを祈っています。
ご興味ある方はこちらをご覧ください。http://www.alterna.co.jp/15030

また昨年の英国CSR・エシカル企業視察ツアーレポートについては、まだ販売をしておりますので、是非お求めいただき自社の活動の参考にしていただければと思います。(値下げいたしました)
またこのニュースレターはマンスリーとして出しておりましたので、また月に1回のペースで皆様に情報をお届けしたいと思います。また皆様の方からもご関心のある事柄などありましたらご連絡いただければ幸いです。
日本は梅雨で、蒸し蒸ししていると思いますが、脱水症状にならないように水分補給を十分されご自愛いただければと思います。
それでは引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

(サステイナビジョン下田屋)

Takeshi Shimotaya for Alterna

最近の寄稿記事はこちらから

【オルタナオンライン】
・トリプル・ボトム・ラインを実践する世界のリーダー ノボノルディスク――下田屋毅の欧州CSR最前線(44)
・真に持続可能な綿花栽培を目指す「ベター・コットン・イニシアティブ」――下田屋毅の欧州CSR最前線(43)
・いかにグローバルでビジネスと人権を推進するか、「ビジネスと人権フォーラム」最新レポート――下田屋毅の欧州CSR最前線(42)
・2050年までのCSR戦略:ネット・ポジティブ下田屋毅の欧州CSR最前線(41)
・CEOが自社のCSR・サステナビリティについて語る――下田屋毅の欧州CSR最前線(40)
・アライアンス・ブーツ社の従業員エンゲージメント――下田屋毅の欧州CSR最前線(39)

【東洋経済オンライン】
・イケアにあって、日本企業にはない経営哲学 – CSR成功のカギはトップダウンにあり
・日本企業は、「水リスク」への意識が低すぎる – コカ・コーラが誇る、水リスク管理術とは?
・ネスレが30万のクレームを収束できた理由 健全なNGOとの協働は、自らのブランドを強くする
・なぜ欧州企業は、人権問題で先行するのか 日本企業が新興国で信頼を勝ち取るためには?
・ストーリーで共感呼ぶ、ユニリーバのCSR すべてのステークホルダーの意識を変えよ

【CSOネットワーク】
・ 「第2回国連ビジネスと人権フォーラムについて(報告)」

【レスポンスアビリティ”サスナビ!”】
・CSOが推し進めるイケアのサステナビリティ戦略
・欧州ここだけの話:CEOが語るCSRのビジョン

【サステナビリティ・コミュニケーション・ハブ】
・共感を呼ぶ、行動につなげる「サステナブル・ストーリングテリング」
・企業のESG情報はどのように収集・活用されているか(ブルームバーグ)
・マークス&スペンサーが実践するサステナビリティ

【シータス&ゼネラルプレス】
・CSVとネスレの人権に関する取り組み:後編(2014/5/6)
・CSVとネスレの人権に関する取り組み:前編(2014/5/6)
・Q: CSRを取締役に持ち込むために、利益・恩恵をベネフィットとして金銭換算することの重要性と事例を教えてください
・サステイナビジョン下田屋毅氏に質問!――マークス&スペンサーのCSR戦略(2014/1/17)

【ブレーンセンター】
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性(その1)
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性(その2)
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性(その3)

日時:2015年10月15日(木)・16日(金)
両日とも9:00~17:00
場所:東京

既にお申込みが始まっております。お席には限りがございますので、参加をご検討いただいている場合には、お早目にお申込みください。
早割(2015年9月25日迄):10%
団体割引、NGO/NPO、大学関係者、公務員、中小企業割引あり
お申込み・お問合せはこちら

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サステイナビジョン ( Sustainavision Ltd. Company No. 7477687)
下田屋 毅
Takeshi Shimotaya (MBA, MSc, CSR-P, 環境プランナーER)
Managing Director, Japan Foundation London CSR Seminar project adviser
ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当科目:CSR)
住所: International House, 24 Holborn Viaduct, City of London,
London EC1A 2BN, The United Kingdom
E-mail: t_shimotaya@sustainavisionltd.com
Website: http://www.sustainavisionltd.com/
Twitter: @tshimotaya
Facebook: http://www.facebook.com/sustainavision
在英日本商工会議所会員企業
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