2015.7.31 Sustainavision Monthly News Letter Vol.26 : 欧州発の循環経済を推進するエレン・マッカーサー財団

2015.7.31 Sustainavision Monthly News Letter Vol.26 : 欧州発の循環経済を推進するエレン・マッカーサー財団

ロンドン在住CSR/サステナビリティコンサルタント・サステイナビジョンの下田屋です。

このニュースレターは、欧州・英国ロンドンからCSR(企業の社会的責任)/サステナビリティについて、ご連絡をさせていただいております。(お名刺交換をさせて頂きました方、当社主催の講習会にご参加頂ききました方、欧州CSR戦略和訳のダウンロードをして頂いた方等ご縁があった方々にご連絡をさせていただいております。)

今回は、欧州発の循環経済を推進するエレン・マッカーサー財団についてインタビューも踏まえてご報告させていただきます。

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現在人類は、限界を考えずに資源を使用、人口が爆発的に増加し、特に新興国を中心に中流層が激増することが予想されています。これらの大きな潜在的リスクが予想される状況下で「取って、作って、捨てる」という従来の直線的な経済システムから、「サーキュラー・エコノミー」と呼ばれる経済システムや社会全体の仕組みを変えるという大局的見地からの根本的な変革が欧州を始め世界で叫ばれています。

「サーキュラー・エコノミー」のコンセプトには、廃棄物の3R(リデュース・リユース・リサイクル)や、資源の効率的な使用、デカップリング(経済成長を維持しつつ、生産時のエネルギー消費を減らし、多消費の産業構造を改めるもの)、持続可能な生産と消費、再生可能エネルギーの使用、環境負荷を減らす根本的な製品設計や、ビジネスモデルの変更、持続可能な資源調達、リースやシェアなど製品とサービスのイノベーションを起こす新しいビジネスモデルを生み出すことが含まれています。

エレン・マッカーサー財団
(http://www.ellenmacarthurfoundation.org/ )
このサーキュラー・エコノミーを推進する欧州の主要団体に「エレン・マッカーサー財団」がある。英国ワイト島を本拠地とし2010年9月に設立されました。同財団は、2005年に当時の単独無寄港ヨット世界一周の記録を更新し世界的に有名となったデイム・エレン・マッカーサーが設立、その名前が付けられています。

今年3月下旬、CSOネットワークからの依頼を受けて、このエレン・マッカーサー財団のあるワイト島を訪問しました。インタビューには、Jocelyn Bleriot氏 Executive Officer, Lead, Communications and Policy、とLenaic Gravis氏, French Content and Partner Relationsが応対してくれました。
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エレン・マッカーサー財団は、①教育、②分析、③ビジネスの3つを主要エリアとし活動しています。

1. 教育(世代を鼓舞し、将来を再考する)
同財団は、大学との協働を実施、パイオニア大学(英・蘭から4校)、ネットワーク大学(英・米・仏・伊・印・メキシコ・中国から12校)と協働し、大学院のプログラムでサーキュラー・エコノミーを先進的に教えるとともに、その大学内で実践も行っています。
また米国シュミット・ファミリー財団(前米グーグルCEOシュミット・エリックが創設)との協働で、「シュミットーエレン・マッカーサー・フェローシップ・プログラム」を実施しています。

これは提携大学の教授等とともにサーキュラー・エコノミーについてのプロジェクトを実施し、学生が中心となりサーキュラー・エコノミーに関する開発及びそのプロジェクトの実践をそれぞれの大学内で実施。年1回6月に英ロンドンで1週間のサマースクールを行い議論を交わしています。また今後は、国際バカロレアとの協働も視野に世界の他の国々への教育を効果的に行うことを考えています。

2.ビジネス(経済全体にサーキュラー・イノベーションの触媒作用を及ぼす)
同財団は、「サーキュラー・エコノミー」を達成するにはパラダイムシフトが必要とされ、活動の鍵となるのは企業で、ビジネスを変えることで多くの事を達成することができるとしています。ビジネスのイノベーションこそ、サーキュラー・エコノミーへの転換の中心に位置するものとし、主要課題への対処を加速するために、グローバルパートナー(シスコシステムズ、フィリップス、ルノー、キングフィッシャー、ユニリーバ)と協働しています。グローバルパートナーは、それぞれ社内で、サーキュラー・エコノミーのプロジェクトを実施し、同財団は、社内セミナー等の教育を提供、プロジェクトの分析も実施しています。またオープン・ダイアログやワークショップも頻繁に実施し、プロジェクトの効果を確認しています。これらパートナー企業は、グローバルに活動する各産業のリーダーとして役割は非常に重要であり、サーキュラー・エコノミーのイニシアティブをグローバルに展開することができています。

2013年2月同財団は、グローバルパートナー(前述)のサポートを受けて、サーキュラー・エコノミー100(CE100)という世界で最初のサーキュラー・エコノミーのイノベーションプログラムを立ち上げています。

このプログラムには大企業だけでなく、公共団体、地域組織、大学、社会的企業が参加し、これら組織が共通する問題に対処するために、実践的なパイロットプログラムや能力構築を提供するとともに協働しやすい環境を整えています。CE100を推進する上で重要なのは、企業がビジネスの中で「サーキュラー・エコノミーの原則」に沿って行い、企業のビジネスの中核として行われるべきものであることです。

同財団のエグゼクティブ・オフィサーのジョセリン・ブレリオ氏は、「企業が通常のやり方で生産をしていて、消費者にだけ持続可能な消費を実施しろというのは正しい方法とは言えない。持続可能な消費を促すためには、持続可能な生産が必要となる。まず企業が持続可能な生産システムを作ることが必要だ。」と話します。また「当初3年間のプロジェクトとしてスタートしたが、メンバー企業からの要望もあり、その後も継続して行っていくプロジェクトとなっている。現在会員数は95で、100になったらその後増やす予定はない」ということです。
活動は、企業のエグゼクティブへの研修の実施や、1年に2回CE100メンバーを対象に2日間のワークショップを開催、サーキュラー・エコノミーの推進を披露する場の提供。現在10のワーキンググループがあり、そこから得た結果を年1回1日のワークショップで発表し、産業・分野を横断的にカバーし推進することを可能にしています。また、「CE100 Summit」という年1回1日のイベントを例年6月に開催(2015年は6月23日、場所ロンドン)。専門家・実務担当者が、この1年間のサーキュラー・エコノミーのトレンドや活動について実践的な内容を提供し、イベントはメンバー間のネットワーキングとしても機能し企業間の多くの協働を生みだしているということです。

3.分析(転換のメリットの強固な証拠)
同財団は、ナレッジパートナーであるマッキンゼー·アンド·カンパニーと協働し、サーキュラー・モデルの経済的潜在力を定量化し、この価値を捉えるアプローチを開発し、「経済レポート」をシリーズで作成しています。

これはサーキュラー・エコノミーへの移行を加速するための論理的根拠を記載したもので、例えば、サーキュラー・エコノミーの実践により製造業の原材料に関するコスト削減が2025年までに6千3百億ドル実現、消費材の材料費削減価値として7千億ドル、またサーキュラー・エコノミーをサプライチェーン全体へスケールアップを加速させると、2025年まで毎年1兆ドルを生み出し、今後5年間で10万の新しい雇用を産み出すとしています。同財団は、主要なサーキュラー・エコノミーの国際的な専門家のネットワークとともに活動しその理解を拡大していくことを行っています。

日本との連携に関心
同財団の経済レポート、ウェブサイトには、日本の取り組みが世界の先進事例として紹介されています。

同財団のブレリオ氏は、「日本の資源枯渇のリスクを回避するための循環型社会を構築していった事例について非常に興味がある。現在エレン・マッカーサー財団が推進しているサーキュラー・エコノミーと日本の循環型経済のコンセプトがどのように違うのかも興味深い。日本も是非これに加わって先進的な事例や情報を共有して頂ければと思う。また日本の大学で、循環型経済や3Rについて先進的な大学があれば連携していきたい。そしてアジアの他地域へも、サーキュラー・エコノミーのコンセプトを共に開発し広げていくことに非常に興味を持っている。」と日本との連携に関心を示していました。

エレンマッカーサー財団では、2015年4月に企業の取り組みに関する情報 を 提 供 す る「CIRCULATE」(http://circulatenews.org/)を始動。そしてさらに2015年5月には、サーキュラー・エコノミーの実践度を測定するツールを公表するなど、活動を加速させています。

欧州委員会は、欧州をより競争力のある資源効率の高い経済へと転換するために、2015年中にサーキュラー・エコノミー戦略を発表する予定としています。

これを踏まえ、欧州が中心となりサーキュラー・エコノミーへの推進を加速し世界での優位性を確保していくことが予想されます。日本は、これまで循環型経済を世界に先駆けて推進してきた経験・知識を世界へと提供し、人口増加、資源の枯渇などの地球規模でのリスクを回避する上で、リーダーシップを発揮することができると信じています。
(おわり)

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英国CSR・エシカル企業視察ツアー・レポートの販売

世界のCSR&エシカルな潮流の発信地である英国で、英国の企業やNGOがどのようにCSRやエシカルな取り組みをしているのか。どのように社会と「対話」しているのか。その最前線をオルタナ主催で7月初旬の5日間の日程で視察した際の内容をレポートとしてまとめました。
◆視察企業・団体名:
ネスレUK、マークス&スペンサー、ボディショップ、ラッシュ、グリーンピースUK、ハーミーズ(HEOS)、ガーディアン・サステナブル・ビジネス、フェアトレード、レインフォレスト・アライアンス等
◆ページ数:90ページ
◆価格:15,000円     ⇒ 8,000円 (値引きいたしました)
(電子ファイルのみの販売となります)
◆お申込み・お問合せ先:サステイナビジョン
http://www.sustainavisionltd.com/2014-uk-csr-ethical-companies-visit-report/

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Business for the Environment, Climate Summit 2015の開催のお知らせ
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企業、政府、メディア、NGOから400人を超えるグローバルリーダーが終結、エネルギー効率、新興技術、資金調達や政策変更のための長期的な展望を議論します。
日時:
 2015年9月9日(水)・10日(木)
場所: 英国ロンドン
参加費: 500ポンド(7月31日までは40%割引あり)
参加登録はこちらから:  http://b4esummit.com/b4e-climate-summit-2015/
詳細PDFはこちらからダウンロード

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 【Innovation Forum イベント】

・How business can tackle deforestation
A make or break issue for Asia’s corporate reputation?
28th-29th September 2015, Singapore

・How business can tackle deforestation
Innovation in Sustainable Forestry: Technology, Risk and Collaboration:2nd–3rd November 2015, London

・Why current consumer engagement fails – and how to fix it
Two days of difficult debate about reality and solutions
9th-10th November 2015, London

・Ethical trade and human rights forum
Transforming supply chains for responsible business at scale
19-20 October 2015, London, UK
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【Ethical Corporation イベント】

・Compliance and Conduct Risk in Insurance Summit 
5-6th November 2015 • Tower Grange Hotel, London

・The 9th Annual CR Reporting and Communications Summit 
10-11th November 2015 • Tower Bridge Hilton

The 10th Annual Sustainable Supply Chain Summit Europe
10-11th November 2015 • Tower Bridge Hilton

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<編集後記>

暑中お見舞い申し上げます。
今回取り上げさせていただいたエレン・マッカーサー財団ですが、日本企業、また日本の大学と連携を考えているとのことでした。ご興味ある方は当方がおつなぎさせていただきますので、是非御連絡いただければ幸いです。

さて、昨日7月30日は国連が定めた「人身取引反対世界デー」でした。
世界には約3000万人現代において奴隷が存在し、強制労働や売春など、意思に反して働かされているということです。人身取引被害者サポートセンターライトハウスの推計によると、日本にも約5万4千人の被害者がいると言われていますが、日本政府からの発表では、昨年2014年1年間で保護された被害者は24名だけ。日本では認知度が低いことが影響し、メディアの露出も少なく、政府の取り組みも遅れているようです。

日本の中での人身取引の事例としては、 外国人女性を対象として「配偶者ビザ」や「興行ビザ」などを悪用して入国させ、約束した仕事でなく売春を強要し性的に搾取すること、また日本人の少女を巧みに誘い、騙し、AVへの出演や、風俗店での仕事を強要することも行われているようです。また外国人技能実習生に対しても劣悪な労働条件で働かせるなど酷い扱いをしている例があるようです。
日本では身近に感じていない「人身取引」「現代における奴隷」ですが、現実に発生していることとして、こちら英国BBCでは時々報道もされています。また英国では、状況を重く見て2015年3月26日に「Modern Slavery Act 2015(現代奴隷法2015)」が制定されています。
この「人身取引反対世界デー」を機会に世界には現代においても奴隷のような扱いを受けている人、また日本においては、日本特有の奴隷制があることを考え、人権に関する問題についての認識をより深めていただければと思います。

さて私は、来週の後半に日本に一時帰国する予定としており、8月末までの滞在の予定です。
(その後は、10月にまたCSR資格講習を実施する予定ですので、10月中旬を含む1~2週間滞在します。)
ロンドンの夏は過ごしやすく、日中は20~25度、夜は10~15度とクーラーがなくても過ごせる環境なのですが、今回日本の暑い夏を体験することになります。7年間経験していないので、どのようになるか少し心配であり楽しみにでもあります。
皆さんにおかれましては熱中症には十分注意され、暑い夏を乗り越えていただければと思います。
それでは引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

(サステイナビジョン下田屋)

Takeshi Shimotaya for Alterna

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【オルタナオンライン】
・トリプル・ボトム・ラインを実践する世界のリーダー ノボノルディスク――下田屋毅の欧州CSR最前線(44)
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・アライアンス・ブーツ社の従業員エンゲージメント――下田屋毅の欧州CSR最前線(39)

【東洋経済オンライン】
・インテルにできて、日本企業に足りない戦略- なぜ従業員にCSRが浸透しないのか
・イケアにあって、日本企業にはない経営哲学 – CSR成功のカギはトップダウンにあり
・日本企業は、「水リスク」への意識が低すぎる – コカ・コーラが誇る、水リスク管理術とは?
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・なぜ欧州企業は、人権問題で先行するのか 日本企業が新興国で信頼を勝ち取るためには?

【CSOネットワーク】
・ 「第3回国連ビジネスと人権フォーラムについて(報告)」

【レスポンスアビリティ”サスナビ!”】
・あなたも奴隷を使っている!?
・競争相手とすら手を組んで水リスクに備える海外の先進企業たち
・CSOが推し進めるイケアのサステナビリティ戦略
・欧州ここだけの話:CEOが語るCSRのビジョン

【サステナビリティ・コミュニケーション・ハブ】
・共感を呼ぶ、行動につなげる「サステナブル・ストーリングテリング」
・企業のESG情報はどのように収集・活用されているか(ブルームバーグ)
・マークス&スペンサーが実践するサステナビリティ

【シータス&ゼネラルプレス】
・CSVとネスレの人権に関する取り組み:後編(2014/5/6)
・CSVとネスレの人権に関する取り組み:前編(2014/5/6)
・Q: CSRを取締役に持ち込むために、利益・恩恵をベネフィットとして金銭換算することの重要性と事例を教えてください
・サステイナビジョン下田屋毅氏に質問!――マークス&スペンサーのCSR戦略(2014/1/17)

【ブレーンセンター】
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性(その1)
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性(その2)
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性(その3)
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<英国IEMA認定サステナビリティ(CSR)資格講習の開催>
日時:2015年10月15日(木)・16日(金)
両日とも9:00~17:00
場所:東京

既にお申込みが始まっております。お席には限りがございますので、参加をご検討いただいている場合には、お早目にお申込みください。
早割(2015年9月25日迄):10%
団体割引、NGO/NPO、大学関係者、公務員、中小企業割引あり
お申込み・お問合せはこちら

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サステイナビジョン ( Sustainavision Ltd. Company No. 7477687)
下田屋 毅
Takeshi Shimotaya (MBA, MSc, CSR-P, 環境プランナーER)
Managing Director, Japan Foundation London CSR Seminar project adviser
ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当科目:CSR)
住所: International House, 24 Holborn Viaduct, City of London,
London EC1A 2BN, The United Kingdom
E-mail: t_shimotaya@sustainavisionltd.com
Website: http://www.sustainavisionltd.com/
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在英日本商工会議所会員企業
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