Sustainavision Monthly News Letter Vol.17:ネスレの包括的CSRプログラムSustainavision Monthly News Letter Vol.17:Nestle’s Total CSR package was issued on 31st of March 2014.
This is only available in Japanese.
いつも大変お世話になっております。ロンドン在住CSRコンサルタント・サステイナビジョンの下田屋です。
マンスリーニュースレターの発行が大分滞ってしまいました。只今日本に滞在しています。
3月も終わり新しい年度が始まりますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
このニュースレターは、欧州・英国ロンドンからCSR(企業の社会的責任)につきまして、ご連絡をさせていただいております。(お名刺交換をさせて頂きました方、当社主催の講習会にご参加頂ききました方、欧州新CSR戦略和訳のダウンロードをして頂いた方等ご縁があった方々にご連絡をさせていただいております。)
さて今回は、スイス・ネスレ本社・公共広報マネージャーのヒラリー・パーソンズ氏にネスレのCSV・CSRについてロンドンで話を伺いました。欧州スイスを本社とするネスレがCSVをどのようにとらえ、また、CSRを推進しているのか、彼女との対話を元にお伝えしたいと思います。
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共通価値の創造(CSV: Creating Shared Value)と聞いて思い出すのは、その提唱者としても知られるハーバード大学マイケル・E・ポーター教授でしょう。しかしCSVという名前を企業として最初に世の中に出したのは、ネスレのようです。今回スイス・ネスレ本社・公共広報マネージャーのヒラリー・パーソンズ氏にネスレのCSV・CSRについてロンドンで話を伺った。欧州スイスを本社とするネスレがCSVをどのようにとらえ、また、CSRを推進しているのか、彼女との対話を元にお伝えします。
ネスレは、自社のCSR活動の一環としてCSVを2006年から実施しており、マイケル・E・ポーター教授等が提唱するよりも歴史は古い。ネスレはCSVの先進的事例としてポーター教授の論文にも出てくるが、そもそもCSVという名前は、ネスレのCSRを他社と差別化する為に考え出したもので、現ネスレCEOであるポール・ブルケ氏が、CSVをネスレが推進する中で、ポーター教授にこの言葉の使用を促したということです。
パーソンズ氏は「ネスレのCSVは、人権とコンプライアンス、環境のサステナビリティなどの土台の上にあり、それら全体でネスレのCSR活動として構成されている」と話します。ネスレのCSR活動は、「ネスレの社会ピラミッド」として3段構造となっている。一番下の土台が「人権とコンプライアンス」、二段目が、「環境サステナビリティ」、そして、一番上が「CSV」となっており、「CSV」はこの2つの土台の上にあり支えられている。つまりネスレのCSRは、「CSV」だけでなく、それを支えている「人権とコンプライアンス」、「環境サステナビリティ」についても実施することでCSR全体をカバーしているのです。

さて、CSRの需要な要素をカバーする「ネスレ社会ピラミッド」ですが、その一番下の土台である「人権とコンプライアンス」の部分には、「法令遵守の監視」、「責任ある広報とマーケティング」、「製品の安全と品質」、「腐敗防止」、「ネスレと人権」、「人権におけるステークホルダーエンゲージメント」、「リスク影響評価」、「安全衛生」が含まれます。この中のどれもCSRの要素としては非常に重要でまさしく土台となるものですが、先進的に取り組んでいる項目としては、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権に関わる部分についてです。
ネスレは、2010年にデンマーク人権研究所とパートナーシップを締結し、人権影響評価を実施。そして2013年には、そのネスレの人権デューデリジェンス・プログラムの取り組みをステークホルダーに伝えるものとして、「ホワイトペーパー」を発行しています。
ネスレ・人権デューデリジェンス・プログラムは、下記の8つの柱の上に構築されています。
① 人権を、新しいまたは既存の方針へ統合
② 幅広い人権問題においてのステークホルダーエンゲージメント
③ 従業員に対する人権トレーニングと人権に関する能力開発
④ 企業活動に関するリスク評価
⑤ リスクの高い操業場所における人権影響評価
⑥ ネスレの人権ワーキンググループを通した人権活動のコーディネート
⑦ 人権活動を実施する為の先進組織とのパートナーシップ
⑧ そのパフォーマンスに関するモニタリングと報告
ネスレは、このように国連「ビジネスと人権に関する指導原則」をネスレ・人権デューデリジェンス・プログラムにより実施している。また人権問題は、「児童労働」、「責任ある調達」、「サプライヤーの人権」として、ネスレのマテリアリティ分析の中で、ネスレとそのステークホルダーにとっての最優先事項として取り上げています。
同じくネスレのCSVを支える「環境のサステナビリティ」は、「環境製品ライフサイクル」、「農業原材料」、「工場の環境の高効率化」、「パッケージの改善」、「輸送と配送」、「持続可能な消費」、「生物多様性」を項目として取り上げ、ネスレのバリューチェーン全体に適用されています。ここでは、廃棄物ゼロへの取り組みや輸送の改善による二酸化炭素排出量とエネルギー消費量の削減、また、生物多様性、森林の転用および破壊的な収穫、水資源管理に関する保護対策を「責任ある調達ガイドライン」に盛り込むなどをして実施しています。
そしてネスレ社会ピラミッドの一番上にくる「CSV」だが、ネスレが力を入れているCSVの3分野は、「栄養摂取」、「水資源」、そして「農業・地域開発」で、これらは、ネスレの本業に近いテーマであり、そしてグローバルで大きな課題の解決にも貢献するものです。またパーソンズ氏は「ネスレのCSVには、フェアトレードが含まれるので、ポーター教授の定義するCSVとはこの点では違う」と話してくれました。
そして、ネスレは、これら「ネスレ社会ピラミッド」に関する事項を「事業運営に関する10の原則」にちりばめて、この原則に則って企業活動を行っています。
<消費者>
1.栄養・健康・ウエルネス
2.品質保証と製品の安全性
3.消費者とのコミュニケーション
4.ネスレの事業活動における人権
<ネスレの人材>
5.リーダーシップと責任ある行動
6.職場の安全衛生
<サプライヤーと顧客>
7.サプライヤーおよび顧客との関係
8.農業と地域開発
<環境への取り組み>
9.持続可能な環境への取り組み
10.水資源
また、この10原則の中の「ネスレの人材」という項目においては、従業員に対する安全衛生の確保やエンゲージメントについても実施しています。
このように、ネスレはCSVの実践とともにCSRの重要な要素についても進め、包括的にCSRを実施している。CSVの実践を進める上で参考になる事例と思われるので、是非参考にして頂ければと思います。
ネスレウェブサイトのリンク: Nestlé in Society: Creating Shared Value
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<編集後記>
ニュースレターの発行が大分滞ってしまいました。3月も終わり新しい年度が始まりますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?3月13日・14日には、第8回目となる英国IEMA認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー資格講習を東京にて開催させていただきました。今回は、IT会社、化粧品会社、自動車会社、外資化学品会社、外資製薬会社、中小企業代表者、大学准教授、コンプライアンス部長、IRマネージャー、CSRリーダー、CSR担当者の方々が参加され、今回も非常に活発に、全員でのディスカッション、グループワークを行うことができました。
また、3月20日には、王立国際問題研究所(チャタムハウス)のラウンドテーブル「Corporate Governance and Code of Conduct in Japan and in Europe」において、コーポレートガバナンスとCSRに関する内容でプレゼンテーションをさせていただきました。ラウンドテーブルのセッションは3回に分かれており、日本からは、東京証券取引所理事長やOECD関係者、政府経済産業省などからも参加されアベノミクスに関わるコーポレートガバナンスの分野や、英国有識者など外側から見た日本のコーポレートガバナンスについてなど様々な議論がなされました。私としては、非常に光栄であり貴重な機会をいただきました。これからも引き続き頑張る所存ですので、ご指導ご鞭撻いただければと思います。
さて、現在日本に滞在中しておりまして、4月14日まで滞在予定としています。4月4日(金)には、CSR資格保持者向けセミナー、4月8日(火)は、CSOネットワーク主催、「皆で学ぼう 欧州におけるCSRの現状と市民セクターの役割」セミナー、また、4月11日(金)グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク主催、「CSRセミナー 基礎から欧州最新トレンドまで」にてお話をさせていただく予定としています。この機会を活用してより多くの方とお話をさせていただければと思っています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
P.S. 只今日本に滞在中で、ほぼ7年ぶりにお花見ができそうなので、わくわくしています。
(サステイナビジョン下田屋)
<セミナー情報>
タイトル:皆で学ぼう 欧州におけるCSRの現状と市民セクターの役割
日時:2014年4月8日(火) 18:30~20:30 (18:00 開場)
場所:地球環境パートナーシップオフィス セミナースペース
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F
TEL:03-3407-8107/FAX:03-3407-8164
http://www.geoc.jp/access
申込み:http://www.csonj.org/event/140408seminar
内容:
(1)基調報告① 在欧サステイナビリティ・アナリストから見た日本企業へのメッセージ
サステイナビリティ・アナリスト 芦田真喜子
(2)基調報告② CSRを巡る最新の欧州動向と企業の反応
Sustainavision Ltd 下田屋毅
(3)ディスカッションと質疑応答(フロアの皆さんを交えて)
- 芦田真喜子
- 下田屋毅
- 黒田かをり
- 冨田秀実
- (ファシリテーター:足達英一郎)
参加費用:無料(ただし事前登録制50人まで)
呼びかけ人:黒田かをり、冨田秀実、足達英一郎
主催団体:一般財団法人CSOネットワーク
「CSRセミナー 基礎から欧州最新トレンドまで」
・日時:4/11(金)13:30-17:00
・講演名:「CSRセミナー 基礎から欧州最新トレンドまで」
・講師:Sustainavision Ltd.(サステイナビジョン)代表 下田屋 毅氏
【プログラム内容】
13:30-13:45(15分) GCおよびGC-JNの説明
13:45-15:05(80分) 第一部「CSRの基礎」講演70分+QA10分
15:25-16:55(90分) 第二部「欧州のCSR最新事情」講演70分+QA20分
・会場: キッコーマン株式会社 東京本社1階 KCCホール
・定員:50名 *残り4席! (3/27 18時20分時点)
・参加費:無料
CSRのオンライントレーニング
CSRトレーニングへの新しいアプローチ
「Getting to Grips with Corporate Responsibility(企業責任への取り組み)」は、企業責任について最も実績のある英国の2名のエキスパートが構築したオンラインの連続トレーニングコースです。

コース:企業責任(Corporate Responsibility)
講習開始日:2014年3月24日(4月24日まで申込み可能)
コース: マテリアリティとリスク
講習開始日: 2014年5月19日(6月19日まで申込み可能)
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