2014.11.30 Sustainavision Monthly News Letter Vol.22 : 現代奴隷制とリスク

2014.11.30 Sustainavision Monthly News Letter Vol.22 : 現代奴隷制とリスク

いつも大変お世話になっております。ロンドン在住CSRコンサルタント・サステイナビジョンの下田屋です。ロンドンはクリスマスのイルミネーションが最近点灯し、クリスマスモードに徐々に入ってきました。たまにサンタの赤い帽子をかぶっている人を見かけます(笑)。
さてこのニュースレターは、欧州・英国ロンドンからCSR(企業の社会的責任)につきまして、ご連絡をさせていただいております。(お名刺交換をさせて頂きました方、当社主催の講習会にご参加頂ききました方、欧州CSR戦略和訳のダウンロードをして頂いた方等ご縁があった方々にご連絡をさせていただいております。)

さて,今回は、「現代奴隷制と国連指導原則」についてお伝えさせていただきます。
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英国のリスク分析会社である「メイプルクラフト」の調査レポートによると、世界における人権侵害は、2008年から70%も上昇し、労働者の権利侵害は深刻化しているという。発展途上国の農村や先住民のコミュニティは、低コスト労働力と資源の需要の高まりの中、土地の強奪や強制退去にも直面している。
2011年には、ハーシー、マーズ、ネスレ、キャドバリーなどのチョコレート会社にカカオを供給していた西アフリカのカカオ農場で児童労働が相次いで発覚。また2013年4月には、バングラデシュの衣料品工場ラナ・プラザ・ビルが倒壊し1200人以上の犠牲者が出る事件があった。これは、雇用主と労働者の関係において、倒壊する恐れの指摘のあったビルに働きにでなければならない労働者の立場の弱さが表すように現代の奴隷制の中で発生したものと言える。さらにショッキングなニュースとしては、2014年6月、英紙ガーディアンが、タイの漁船での奴隷労働を報道した。これは6カ月間の調査の結果、タイの漁船に人身売買により売られたミャンマー人、カンボジア人らが奴隷労働を強いられていたことを暴いたものだ。タイの漁業に関わる労働者は30万人、そのうち90%が外国人の出稼ぎ労働者とされている。奴隷となった人々は、何年も無給で過酷な労働を強制され、漁船上での暴行や処刑も頻繁に行われていた。タイ食品大手ジャルーン・ポーカパン・フーズ(CPF)は、その漁船から買い取った魚粉を養殖エビの餌として使用しており、この養殖エビは、英国のスーパーマーケットのテスコ、米国のウォールマートを始めとした世界各地の大手スーパーへ出荷されていた。企業活動の影響による人権侵害に加え、推定2980万人が未だ世界では奴隷として働いているとされ、強制労働からは年間1500億ドルの利益を生み出しているとも推測される。

2011年6月に国連人権理事会の承認を得た「国連ビジネスと人権に関する指導原則」は、これらの問題に対処するために設計されたものだ。「国連ビジネスと人権に関する指導原則」は、国家の人権の保護、企業の人権の尊重、救済に関するガイドラインである。2013年9月には、英国政府は、世界で初めて「国連ビジネスと人権に関する指導原則」の国内プランを発表、EU加盟国ではその他、オランダ、イタリア、デンマークも発表している。「国連ビジネスと人権に関する指導原則」は、自主的なアプローチと規制の双方をうまく活用することを推奨しているが、企業による人権侵害の被害者に対する救済へのアクセスに対するコミットメントは進んでいない状況もある。そのような中で2014年6月には、エクアドルから企業による人権侵害に歯止めをかけるとして国際的な条約締結による法規制化の提案がなされ、国連の作業部会の設置が多数決で決まるという動きもでている。

英国では、このような背景の中、デイビッド・キャメロン首相が、「現代の奴隷制の根絶において英国が世界をリード」することを表明。2013年12月に英国政府は先駆的な現代奴隷制法案の草案を発表、現在は審議中で、法案設立に向けた最終段階に入っている。この法案は英国の大企業に、サプライチェーン上の奴隷制を特定し、根絶するための手順の報告を求めるものだ。また、この一連の動きの中で、10月18日は「英国反奴隷の日」と制定され、現代において奴隷制が継続して起きている認識を高めるとともに排除するため、人々に広く周知し行動につなげる活動を行っている。

このように英国では、現代における奴隷制を根絶するための先進的な取り組みとしての法制化の動きがあり、企業のサプライチェーンにおける不当な労働行為を根絶する圧力がかかっている。企業はサプライチェーン上で現在も発生している奴隷制をどのように判断し、どのように行動へと結びつけるのか。国連が作業部会を設置することを可決した条約締結による法制化の動向も見守るとともに、国際的な枠組みの中で人権に関する行動をとらなければならない時期にきている。

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【「ビジネスと人権に関する指導原則」研修】
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英国の調査機関のレポートによると、世界における人権侵害は、2008年から70%も上昇し、労働者の権利侵害は深刻化しているといいます。企業が関わる人権の問題は、国境を越えサプライチェーン上においてカバーしなければならない最重要項目であり、海外において人権侵害を訴えられ、NGOなどから非難されることも実際に起こっています。そのような中、2011年6月に国連人権理事会にて「ビジネスと人権に関する指導原則」が承認され、この国際的な基準に則って、国と企業がそれぞれ役割を果たすことが期待されています。本研修では、海外のグローバル・コンパクトのネットワーク(ドイツ・英国・スイス・オーストリア・ケニア・インドネシア・ウクライナ)にて導入されている「ビジネスと人権に関する指導原則」研修を日本においても開催し、グローバルでの人権課題について簡潔で実践的なアドバイスを提供いたします。

◆とき:2015年1月22日(木)・23日(金)両日とも9:00~17:00
(コース終了6ヶ月後の振り返りを行う1日学習も含み、計3日間)
◆ところ: 東京都港区(お申込者に事務局よりご連絡致します)
◆対象者: CSR部門、人事部門、資材・調達部門、広報部門、法務・コンプライアンス部門など
◆定員: 16名
◆主催: サステイナビジョン
◆講師: ルーク・ワイルド氏(トエンティ・フィフティ社ディレクター)、下田屋毅氏(サステイナビジョン代表取締役)
◆ゲストスピーカー:白石 理氏(ヒューライツ大阪、所長)、松岡 秀紀氏(ヒューライツ大阪、嘱託研究員)
◆参加費:
通常料金 個人 : 145,000円
ニュースレター購読割引15% : 123,250円
◆お申込み・お問い合わせ⇒http://www.sustainavisionltd.com/bandhr/
◆詳細説明PDF: http://www.sustainavisionltd.com/wp-content/uploads/2014/11/Business-Human-Rights-training-Jan2015-V1.pdf

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編集後記

本日11月30日にジュネーブ入り致しました。これは明日から始まる第3回国連ビジネスと人権フォーラムに参加をするためです。昨年の第2回目に続いての参加ですが、今回の興味の焦点は、本年6月にエクアドルから国際的な条約締結による法規制化へ向けた国連の作業部会の設置が多数決で決定したことについての議論となります。この条約締結の動きについてエクアドルの政府などが参加し議論をするセッションもいくつか設定されており、非常に興味深く、その提起した背景や現実の人権侵害の状況などを確認したいと思っています。また、他の様々なセッションでは、政府、企業によるビジネスと人権に関する指導原則の取り組みについての進み具合や人権への影響をどの程度食い止められているのか、救済の仕組みはうまく整えることが出来ているのかなど、実際的な効果について議論がNGO・市民団体を中心に活発になされると思われます。そして、先住民の代表がパネリストとして参加するセッションもあり、その場で話される彼らの実際の状況について非常に興味があります。
今年のオープニングプレナリーでは、ユニリーバのCEOポール・ポールマン氏、またネスレCEOのポール・ブルケ氏が基調講演をします。ここではこの世界的に影響力のある2人のCEOからのビジネスと人権に関する取り組みについての強い意思表示がなされると思われます。そして、昨年は不参加だったジョン・ラギー教授が本年は参加され最終日のクロージングにおいて、今回の議論を踏まえ「グローバルな状況下におけるビジネスと人権の体制のための戦略的な方向性と次のステップ」についての考えを述べられることになっています。いろいろな面で非常に興味がある今回のフォーラムですが、またこのフォーラムでの議論を踏まえて皆さんにお伝えできればと思っています。

(サステイナビジョン下田屋)



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【ブレーンセンター】
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性(その1)
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性(その2)
CSRの推進に不可欠な社内浸透教育の重要性(その3)

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英国CSR・エシカル企業視察ツアー・レポートの販売

世界のCSR&エシカルな潮流の発信地である英国で、英国の企業やNGOがどのようにCSRやエシカルな取り組みをしているのか。どのように社会と「対話」しているのか。その最前線をオルタナ主催で7月初旬の5日間の日程で視察した際の内容をレポートとしてまとめました。
◆視察企業・団体名:
ネスレUK、マークス&スペンサー、ボディショップ、ラッシュ、グリーンピースUK、ハーミーズ(HEOS)、ガーディアン・サステナブル・ビジネス、フェアトレード、レインフォレスト・アライアンス等
◆ページ数:90ページ
◆価格:15,000円 (電子ファイルのみの販売となります)
◆お申込み・お問合せ先:サステイナビジョン
http://www.sustainavisionltd.com/2014-uk-csr-ethical-companies-visit-report/

 

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